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quarante-sept. ページ48

.








『..............ぃ........』




『......ぃ、.................か、..............で..........』






どこからか、声が聞こえる。





『.....に.....、ぉ..........で............』





誰の声が、誰を呼んでいるのか。

何を言っているのか。





ぼやけた意識の中で僕は、手を伸ばす。





.






.







「…またか……」





体を起こし、目を擦る。






頬を伝ってゆく何か。


…また、泣いていたのだろうか。







「妙な夢ばかりだな、最近は…」





サイドテーブルの上のノートを手に取りページを捲る。


ペンを取ってみるものの、何も書けない。





…ここ数年、夢の内容がほとんど思い出せない。

かつてはあんなにも夢に心惹かれ、取り憑かれていたというのに。






「…もう歳かな、僕も」






ふと、右腕の傷痕が目に入る。


いつも見ているのに、何故か今日は妙に気になって仕方ない。






「…?」





ベッドから降りて、洗面台の前に立つ。




少し長めの前髪を掻き上げれば、両眼が露わになる。

顔を洗って、そっと眼帯を右眼につける。




髪を束ね、首元にチョーカーを巻き、黒い服を着て。






「天気がいいな…」






新聞を手に取り、軽く内容を一瞥する。


一面の小さな欄に目が止まる。






「…人食い虎、か。乱歩さんあたりは好きそうだな…」






新聞を閉じて、コーヒーを一気に飲み干す。



時刻は7時50分。

そろそろ家を出る時間だ。





「C'être un jour calme. (穏やかな一日になりますように) 」





ゆっくりと歩くその姿に、かつての少年はいない。



…だが、今も昔も変わらず、何かを捜している。




その何かが、分からないわけじゃない。

むしろその何かは明白だ。



だがそれでも、答えも分からぬままに藻掻くだけ。






目まぐるしく変化してゆく時の流れの中で、僕はきっとその流れに抗おうとしている。


そうまでして、捜しているものは、、




.





.






そこまで書いて、男はそっとペンを置く。


分厚いノートを閉じてひとつ深呼吸をする。





「Qui suis-je ? (僕は、誰だったっけ) 」






ぽつんと呟いた言葉は、虚空へと消えていく。


彼の、" 何か " を捜す旅は、まだ終わらない。







✼••┈┈┈┈┈┈┈┈Fin.┈┈┈┈┈┈┈┈••✼


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作者より→←quarante-six.



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サングラス - 良かったです!!この作品読むのとても楽しいので嬉しいです!頑張ってください! (2016年10月21日 15時) (レス) id: d1c26ece08 (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - やったあああああ!これからも更新、頑張ってください!! (2016年10月19日 23時) (レス) id: bed4eaded8 (このIDを非表示/違反報告)
Lan(プロフ) - 初コメです。いつも楽しく拝見させて頂いているので、消さないで下さい。これからも楽しみにしてます。頑張って下さい。あ、返信いりませんよー (2016年10月19日 0時) (レス) id: 8a665e221e (このIDを非表示/違反報告)
こゑだ(プロフ) - 初コメです。これは自分が勝手に思っているだけですが、このサイトを利用している人はある程度性的知識が豊富だからフラグがどうとか言ってると思うんでフラグはいらないと思います。私もこの作品の更新を楽しみにしている内の1人なので消さずに頑張ってほしいです。 (2016年10月18日 19時) (レス) id: e4866b2b81 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫 - 初コメ失礼致します。下の方が仰せられております通りだと思います。読者の私としてもフラグが必要な程の表現は無いかと思われます。最終的な判断は作者様となりますが私はこのまま更新を続けて頂けたらと考えております。お目汚し失礼致しました。 (2016年10月18日 19時) (レス) id: 46877d2f51 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年9月10日 8時

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