【文スト】Petit morceau de la mémoire

trente-huit. ページ39

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「…なあ、アンタはいったい何者なの？」


福「何者、とは？」


「アンタが僕を知らないように、僕もアンタを知らない。僕は多少自分のことを話したよ」






慣れない着物を着て、僕は彼を見つめる。



ほぼ初めてに等しい" 和の空間 "は、どこか懐かしさを覚えて。

…やはり根は日本人なのだなと痛感させられた気がした。






福「探偵社の社長をしている。そして私もまた、異能力者だ」

「…へえ、社長さん」






探偵社、ということは、さっきの江戸川乱歩という男もそこの社員だろうか。




…だが、さっきの男は異能力者じゃないはずだ。

でもこの男は、異能力者、か。






福「…武装探偵社、という名を聞いたことはあるか？」


「武装探偵社？……いや、初めて聞くけど」

福「社員の殆どが、異能力を持っている」

「へえ…」

福「私はそこの社長だ」

「…なるほどね」






武装探偵社。


名前は知らなかったが、そういった組織があるのは聞いたことがある。




ほとんどの社員が異能力持ち。

…つまり、一週間前の僕がここにきていた可能性もありうるというわけだ。






福「時が来れば、君も社に入ってほしい」

「それは、どうして？」

福「その方が君を守れるからだ」

「え、？」


福「いずれ分かる」





…この男は、何を考えているのだろう。


その目には、僕はどのように映っているのだろう。




先程彼は、僕の目に映るものを知りたいと言っていたけれど、僕にだって彼の景色は知りえない。



それどころか、僕が誰かさえも知らない。





「…僕を連れてきたこと、後悔する日が来るよ」

福「そうかもな。だが、私が生きているうちには来ないさ」


「っはは、…馬鹿じゃないの」





自分でも分かるくらいの、乾いた笑い。


…ほら、彼の考えていることなんて、わかりっこない。



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