trente-quatre. ページ35
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- Fukuzawa side -
一週間前、出会った少年。
美しく儚げなその少年は、私に興味を示したらしい。
乱「おかえり……ってあれ、その人だーれ?」
福「今日からここに住まわせる人だ」
乱「ああ、この前言ってた人か」
黒い、癖毛ぎみの長い髪。
白い肌の端正な顔立ちと、すらりとした立ち姿。
乱歩は彼を興味深そうに見つめている。
…Aの方は、かなり警戒しているようだが。
「…A」
乱「へえ、Aくん。僕は江戸川乱歩、探偵さ」
「探偵?へえ、賢いんだ」
挑発的な目で乱歩を見つめるA。
…二人の間を割るようにして、部屋へと案内する。
福「…この部屋を使うといい。着物を着たことは?」
「ない」
福「…とりあえず服を誂えるまでこれを着ていてくれるか」
「構わないけど、…どうやって着るのこれ」
落ち着いた色の着物を、どうにか着せてやる。
…さすがは日本人で、着物がよく似合う。
乱「似合うじゃん」
「へえ、こうやって着るんだ」
しばらく鏡の前で自分の姿を見ていたかと思うと、急にこちらに振り返る。
「…なあ、髪切ってよ」
乱「え、切っちゃうの?」
「やっぱ自分でやる。鋏とか無いの?」
福「あるが…」
「じゃあ貸して」
差し出した鋏を受け取り、鏡の前に座り込むと。
…徐に、その長い髪に鋏を入れ始めた。
乱「…結構いったね」
「自分でやったことないからなあ、…ねえ、できる?」
乱「できるよ」
肩くらいの位置で、乱雑に切られた髪。
…それでもなお美しいと感じてしまうのは、彼の持つ美しさのせいだろうか。
乱「…どのくらいまで切るの?」
「そうだな…ごく普通の男並みにしてくれ」
まっすぐ前を向いたまま、静かに目を閉じているA。
少し躊躇いながらも、彼の髪に手を触れる乱歩。
…あの綺麗な黒髪は、これまでどれだけの人の血を浴びてきたのだろうか。
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サングラス - 良かったです!!この作品読むのとても楽しいので嬉しいです!頑張ってください! (2016年10月21日 15時) (レス) id: d1c26ece08 (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - やったあああああ!これからも更新、頑張ってください!! (2016年10月19日 23時) (レス) id: bed4eaded8 (このIDを非表示/違反報告)
Lan(プロフ) - 初コメです。いつも楽しく拝見させて頂いているので、消さないで下さい。これからも楽しみにしてます。頑張って下さい。あ、返信いりませんよー (2016年10月19日 0時) (レス) id: 8a665e221e (このIDを非表示/違反報告)
こゑだ(プロフ) - 初コメです。これは自分が勝手に思っているだけですが、このサイトを利用している人はある程度性的知識が豊富だからフラグがどうとか言ってると思うんでフラグはいらないと思います。私もこの作品の更新を楽しみにしている内の1人なので消さずに頑張ってほしいです。 (2016年10月18日 19時) (レス) id: e4866b2b81 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫 - 初コメ失礼致します。下の方が仰せられております通りだと思います。読者の私としてもフラグが必要な程の表現は無いかと思われます。最終的な判断は作者様となりますが私はこのまま更新を続けて頂けたらと考えております。お目汚し失礼致しました。 (2016年10月18日 19時) (レス) id: 46877d2f51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年9月10日 8時