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- Fitzgerald side -
バーカウンターで、隣に座っているA。
まだ真紅のドレスに身を包んでいる彼は、横顔さえも美しい。
「…ホント、今日は最悪な1日だった」
フィ「どうしてだい?」
「パーティーは嫌いなんだよ。息が詰まりそうになる」
今夜の彼の仕事は、政府の要人の暗殺。
…彼の手際は完璧だった。
あのワルツの後、Aはボーイに話しかける。
まもなくボーイが標的にシャンパンのグラスを渡したかと思えば、ナイフで刺殺。
だが、我々に疑いの目はかからない。
…その瞬間に、ボーイが自ら命を絶ったからだ。
フィ「精神操作の異能か」
「いや、あれは心理学だとかの応用。癪だけど、今夜はこんな格好で助かった」
フィ「それは何故?」
「あの会場のホテル、スタッフは男ばかりだったから」
そう呟いて、彼は酒を呷る。
…普通の格好だったら女性を利用するつもりだったというわけか。
フィ「心理学など、いつの間に学んだのだ?」
「…ほぼ独学。アンタの図書室に本があったじゃん」
フィ「成程な」
「…そういやアンタ、あの人が心配してたけど。『この所あまり帰っていらっしゃらないから心配だわ』ってね」
口調を完璧に真似て、Aは笑う。
フィ「それはAのせいだろう?」
「僕が?なんで、…っ」
彼の華奢な手首をそっと掴む。
深青色の瞳に映る自分の姿が、少し揺れているのが分かる。
「…今夜は家に帰りなよ」
フィ「明日1日は家で過ごせばいい」
「…アンタ、最低だな」
フィ「すべて君のせいさ」
はあ、とため息をついたその唇にそっと口付ける。
朱を引いた唇は、やけに色っぽい。
「もっとまともな言い訳を考えなよ」
フィ「考えるのは明日にしよう」
そう言うと、彼は溜息をついてマスターに『シェリー』を頼んだ。
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シェリー【今夜は貴方に全てを捧げます】
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春海。・:+°(プロフ) - ゆきめさん» コメントありがとうございます。完全な捏造です。遥か昔はこんなんだったら美味しいなっていうごくごく個人的な妄想ですので、不快な印象を与えてしまい申し訳ありません。現在は奥様一筋である姿を本編でそれとなく匂わせていたつもりでしたが、私の力不足です… (2017年6月8日 22時) (レス) id: 45c2ed30e2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきめ - あれ、フィッツジェラルドさんって奥さんをほったらかしにして、誰かと不倫するようなゲス野郎でしたっけ? (2017年6月8日 21時) (レス) id: 8d53b1880e (このIDを非表示/違反報告)
ウェン - はじめまして!毎日楽しく拝見しております。これからも頑張ってください! (2016年12月3日 0時) (レス) id: 6e056de376 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年12月2日 22時