5 ページ13
「じゃぁ、先輩。私もう帰りますね」
俺が濡れた髪のまま、シャワーから戻った時のことだった。
洗い物やらなにやらを尋常じゃない速さで、しかも完璧に全て終えた彼女は
にっこりと綺麗な笑みを張り付けたその顔面でソファから立ち上がった。
確かに学生である彼女はあまり泊まることをしない。
いつも日付が変わる前に俺が家に帰している。これがいつものこと＿＿＿＿だが。
合わせようとしてもやはり合わない視線。少し居心地が悪そうにしているような、ほんの少し、俺にしかわからないレベルの些細な態度の違い。
いつもなら「帰りますね」というときに、その綺麗な瞳に影を差して寂しそうに言うくせに、
今日はそれが本望のような、早く帰りたいというような声色。
勘違いかもしれないで済まされるような、本当に感覚的でしかわからない違い。
しかし、それでも俺は彼女が「何かを隠している」という確信があった。
俺が何も言わないで立ち尽くしているのをよそに、彼女はブラウンのバッグを手にとる。
「では、またメールします」なんていつもの言葉を俺にかけて、ふわりと俺の横を通った。
彼女の屋敷と比べると、100分の1にも満たない短い廊下に足を踏み入れ、すぐそばにある玄関へと向かった＿＿＿＿＿が、
「おい、待て」
反射的に振り返った俺が、彼女の細い腕を強くつかむ。
何も弱音を言わないこの二次元から登場したお姫様に、ひどくイラついていて。なんで言わねぇんだよ、ふざけんな。そんな激しい怒りの気持ちからか、彼女を力任せに壁に押し付けていた。
ダンッという彼女の体が強く壁にぶつかる音が、こじんまりした部屋に響く。
その音で自分が彼女になにをしているのかわかっても、やめる気はなかった。
痛むほどに強くつかんだ腕を壁に縫い付け、細く頼りない肩を捕まえる。
濡れたままの髪から水が垂れ、彼女の白く透き通った肌に跳ねた。
「……っ千尋先輩？」
突然の行為に驚いた彼女が、顔を一瞬歪ませてから俺に問いかけた。
いくら天才でも運動神経がよくても、こうして男の力で壁に押し付けてしまえば彼女も抵抗はできないのだろう。視線だけが困惑を訴えていた。
そんな困惑の色を宿した瞳を見下ろし、吐息がかかるほど顔を近くに寄せる。
「今更、お前がハイスペックな王子様がいいとか言い出しても
俺はもう誰にも譲る気なんてねぇから」
そう言い切った後、俺は彼女の唇を強引に奪った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 285人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「黒子のバスケ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鎖月零(プロフ) - Flower＊さん» flower！ありがとうございます！！短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました（笑）私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです！続編頑張ります！ (2018年2月26日 18時) (
レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower＊(プロフ) - 1完結(？)おめでとうございます！甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ﾉωﾉ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます！ (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます！！！ (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……！甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ！黄瀬くんの好きですー！規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー！ (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
