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「……わからないな、君のその感情も願いも。
どうして夢なんてものを見てしまったのかも、どうしてそんなに夢に依存するのかも。」
「わからない」という自分の無知を認めるような発言はしたくなかったが、この場合は仕方なかった。知りたくもない。
彼女にはもう、決まった道がある。わざわざ荒波の中泳ぐような馬鹿なマネをせずとも、彼女には安定した未来が決まっているのだ。経済的にも権力的にも申し分ないものがしっかりと。
俺の意見は一般的であり、きっと一番正しい意見のはずだ。
しかし、彼女は俺の意見を「正解」だとは認めなかった。ゆるゆると首を振り、俺の方をじっとみる。なぜか可哀想なものを見るような目で。
「やっぱり君は人生損しているわ。
君には何も欲がないもの。
君の『勝利』への執着は、勝ちたいではなくて勝たなければいけないという使命感でしょう?
だから、私は可哀想だといったの。君には何にも欲がない。夢も希望も捨てきっている。」
「……欲や夢を持つことが正しいことか?」
「正しいとは言わないわ。でも、人生をとても彩るものなのは確かよ。
他人じゃなくて、自分のために生きられるのだから。
……たとえどんな険しい道だろうと、幸せに決まってるでしょう?」
俺とはあまりしゃべりたくなさそうな顔をしては、食事が始まるまで一度も俺と目を合わせなかった彼女。そんな彼女が俺をしっかりと見つめ、どこか楽しそうに言葉を奏でている。
俺は自分が無欲だということは当の昔から知っていた。何も手に入るからこそほしいものはほとんどない。欲しいと望めばすぐさま飛んで出てくる。そんな生活がどこか嫌で欲しいという感情を消していた。
代わりに全てに勝たなければいけないという使命があったからか、自分が突き抜けて無欲だとも思ってはいなかった。そして、無欲というものは非難される対象になるとも思っていなかったのだ。
____だが、目の前の彼女はどこか俺に欲や夢を持たせるような、話しぶりをしている。
夢を持つことがどれだけ楽しいことかを輝かしい瞳で語っている。
「君は他人に決められた道を進んでいいの?
なりたいものも、やりたいものも、やって楽しいと感じることさえ、一つもないの?
______きっと、違うでしょう?」
飛び立て。
籠の檻から、大空へと。
彼女の言葉は、俺にそう告げていた。
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
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