ただずっといちゃいちゃしてるだけ【黒子のバスケ】

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そうして彼女の従者に付き従い、彼女を店の医療スペースへと運び、
緊急に呼び出した花京院家の医者と医療スタッフの治療を受けた。

血まみれになった俺の服も着替えさせられ、医療スペースには俺と眠っている彼女の二人きりとなる。

父親同士は現在婚約関係についての話し合い、医療スタッフはなぜか俺達に気遣ってその場を離れてしまったのだ。起きた時にお伝えください、とにこやかに言ってどこかへ去っていった。

帰るわけにもいかないため、どこかにいるのは確かだが、なぜ俺達を二人きりにしようとしたのかはわからない。さしずめ婚約者同士だから……とかいう面倒くさい思考からくるものだろう。

確かに許嫁ではあるものの、今回の件で婚約関係は破棄か一時解消となる可能性が高い。そうでなければ彼女が本当に自分の喉元にナイフを刺しかねないからだ。




＿＿＿＿まぁ、聞きたいことは確かにあるんだが……。


命のない人形のように眠る彼女の真っ白な顔を見ながらも、俺の思考は彼女の一つの言葉をずっとリピートしていた。


『可哀想な人』


彼女ははっきりと、俺に向かってそういっていた。
君は可哀想な人。憐み、蔑みの瞳ではなかったが、その赤い目はどこか悲しい色をしていて。

あれは完全に彼女の本心だった。思っていた本当のことを俺に言ったのだ。
俺が嫌いだから婚約を解消したいのではない。俺は可哀想な人だ、と。


すべてに勝ち、全てを持つ俺のどこが「可哀想」なのかを知りたかった。
金も権力も財力も容姿も勉学も運動も全て、全て完璧なはずだ。なら、なぜ。



「……ん……。」


その時、俺の強い疑問を受け取ったかのように、彼女がぴくりと瞼を震わす。

肩の痛みはやはり続いているのか、少しだけ眉を寄せ、小さく唸った。
左手を動かそうとして、思い通りに動けなかったからか、一度下す。



「……大丈夫か」



相当な痛みなのか、と俺が腰を浮かしたその時。

彼女の瞼が徐々に持ち上がり、赤い瞳がその奥から覗いた。どうやら目を覚ましたようだ。
ぼうっとした瞳が右往左往し、自分が寝かされていること、辺りには俺しかいないことを察知していく。



「…………赤司……征十郎」


「あぁ。……何があったか、覚えているか」


「そこまで記憶力悪くないわ……。大丈夫よ。
ただ、自分で刺した怪我を手当てされたっていうのが面白くないけどね」

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