春千代と解体屋 2 ページ5
━NOside
「A…」
「お!ヤク中飛んだな」
「ふー。マジAが居て良かった」
埃臭い倉庫のど真ん中。
辺り一面血の海と化していた。
その中、汚れる事も気にせず座り込むAに抱き着くように眠る春千代の姿があった。
事の発端は、春千代が贔屓にしていたバイヤーの裏切りだった。
新作だと言われ渡された薬を疑いもせず呑んだ春千代が暴れだし、三栄なく銃で撃ち殺したのが辺りに転がる部下だった者達と裏切ったバイヤー達。
取り引きに1人で行かない、というルールがあったお陰で訳が分からなくなった春千代が自分の頭に銃を構える寸前で止めることが出来たのだった。
「ヤク中相変わらずAに弱いな」
「赤ん坊みたいにA〜A〜って泣きついてたもんな」
灰谷兄弟は面白そうにケラケラと笑った。
今日の付き添いがAだったのが一番の不幸中の幸いだったのだ。
灰谷兄弟は後からAが呼んだ為、特別付き添いでもなければ面白がってやって来たと言った方が正しい。
「人一倍警戒心強い癖に懐に入っちゃうと能無しになるからね〜春ちゃん」
Aはいまだヨシヨシと春千代の背中を擦りながら笑う兄弟達に言葉を返す。それはまるでこうなる事が分かっていたかのような言い草だった。
「こいつ重っ」
竜胆が春千代をAの代わりに起き上がらせ肩に腕を掛けながら立ち上がる。
「Aちゃん気づいてたでしょ今日の事」
その後ろで蘭は薄らと笑みを浮かべながらAにそう言った。
「え?マジ?」
竜胆は驚いたように目を見開きながらAを見た。
「知ってたらこうなる前にオレがバイヤー殺してたよ」
と、マスク越しに笑顔を作った。
蘭は目を細めながら「確かに」とAの腰を抱いて歩き出す。
Aは嘘をついた。
見破られても特に問題のない嘘。
Aは知っていた。
春千代に近づいてきたバイヤーがはなから梵天に協力する気が無く裏切る為に近づいていた事を。
・
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「ごめんね春ちゃん、怖かったね」
帰り道、Aの膝で眠る春千代の頭を撫でながら小さく呟く。
春千代を囮にしてバイヤーを殺させた。
ボスではなくA自身が作り上げた作戦だった。
仲間すらも上手く扱う。
敵に回すと1番危険な人物なのだ。
それは彼が梵天をそのまま擬態化させた男だと、言われる理由であった。
「裏切り者には梵天の鉄槌を」
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作者名:消毒液 | 作成日時:2021年11月29日 1時