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「どうせなんか始めてもすぐ出来るようになっちゃうし、入っても多分、どうせ退屈なんスよね」

 まだあどけなさが残るものの美しいその相貌には、幾許かの諦めと憂いが宿っていた。黄金色の瞳は空を仰ぎ、何処か遠くの景色から何かを見つけようとしているようにも思える。
 春の強い風が、まだ彼が幼いなりに得てきた経験から滲み出る憂鬱を慰めるように、手触りの良さそうな金髪を揺らしていた。
 そんな心底つまらなそうな、そして心底何かを求めているような黄瀬くんの横顔を見て私はこう思っていた。

 うわ、話の流れ変わった。サインの話切り出しづら〜。と。

 いくら私がクラスメイト(めっちゃイケメンなモデル)のサインをヤフ○クで売ろうとしている様な、邪な心を持つ汚い人間でも、流石にこの流れで「えー大変だね。てかサインちょうだい」と言えるほどKYでもない。

 とりあえずサインはまたチャンスがありそうな時に貰おう、と溜飲を呑み込んだはいいが、それはそうとしてこの黄瀬くんの言葉に私は何と返すのが正解なのかがわからなかった。

「やってみなきゃわかんないじゃん!」
 ダメ。やった上でのこの発言だ。いくら彼がまだ幼く、これまで経験してきた世界はまだまだ狭い、と大人目線の私からはわかっていても、その考えに至るまでの彼の葛藤を否定することは人として良くない。

「そうなんだー」
 ダメ。なんか助言するのも良くなさそうだけど、せっかく話してくれてんのに興味を示さないのもなんか良くない気がする。

「フン、井の中の蛙だね」
 ダメ。めちゃくちゃウザすぎる。私だったら次の日から距離置く。

「それじゃバスケ部とかは? なんか今年の一年めっちゃ強いらしいよ!? 黄瀬くんが敵わな〜い! って思っちゃう人も見つかっちゃうかも!?」
 いっちばんダメ。原作の流れを無視して出しゃばんのは私のポリシーに反する。

 この間コンマ3秒。真剣に考えに考えた結果私が出した答えはこうだった。

「んーじゃあ、なんか楽しいこと始めるまではとりあえず私と帰宅部エースの座争おー」

 うわー……なんかこれも違う気がするな……と、喉を震わせ言葉にした後、今更ながらに思う。覆水盆に返らずなんてよく言ったものだなと思いながら、気まずさを紛らわすようにローファーを履き直すふりをした。

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設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

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