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「この後後夜祭だっけ」
「そッスね。自由参加」
へー、と適当な相槌を打ちながら黄瀬くんから貰ったぬいぐるみをむにむに、と感触を確かめる様に触れる。
「Aちゃん後夜祭見たいッスか?」
「どっちでも良いかなぁ」
頬杖を突いた状態で問う黄瀬くんに曖昧な返答をすると、「お」と彼は嬉しそうに声を発した。夕陽をバックに爽やかな笑みを浮かべる。
「じゃあこの後マジバ寄って帰ろッス」
・
陽は傾き、徐々に空は夜を迎え入れる準備を始めている。
学校を出て黄瀬くんの半歩後ろで橙色の空を仰ぎながら、「終わっちゃうと終わっちゃうで寂しいね〜」と言えば、「そーッスね」という声だけが返ってくる。
目の前の金髪が風に揺れる様をぼーっと見て、夕陽に照らされると色に深みが増すから何だか羨ましい地毛だななんて考えていると、不意にくるりとこちらを向いた黄瀬くんとばっちり目が合ってしまった。
「俺、考えたんスよ」
「何を?」
素直にそう聞けば、黄瀬くんはスッと短く息を呑んで言った。
「Aちゃんのこと」
「はあ」だの「へえ」だの、曖昧な返事をしようかと思ったが、何だかそんな雰囲気じゃない様な気がして、私は黙って続きを促した。
「俺は、Aちゃんと手繋ぎたいとか、ちゅーしたいとかそういうんじゃないんスよ。多分」
急に濃厚なワードが出てきたな、と思いながら「うん」と相槌を打つ。
「多分俺は、仮にAちゃんに彼氏が出来たとしても、放課後2人でコンビニでアイス食ったりとか、休み時間話して俺ら合わないッスよねみたいな、なんか、そーゆー超くだらない話とかしたいんスよ」
黄瀬くんの表情はいつになく真剣で、でも少し恥じらいが混じっている様に見えた。
「Aちゃんにも、俺のことそう思ってて欲しいんスよ。……なんか、何て言えば良いんだろ」
そう言うと私と目を逸らす様に視線を下にずらして、頭を少し恥ずかしそうに掻く。彼の綺麗な金髪がちょっと乱れていくのを茫然と眺めていた。
やがて黄瀬くんは意を決した様に再び私を見つめ、言葉を紡いだ。
「多分、Aちゃんが頭の中で友達思い浮かべる時に、一番に俺が出てくるくらいのカンケーセーでいたい……ッスね」
黄瀬くんは言い終わると、はあ、と大きく息を吐き、照れ隠しの様に「そーゆーことッス」と付け加えた。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時