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紫原敦。
208cmというそれだけで何かしらの雑誌に特集を組まれそうな恵まれた身長もさることながら、その大人でも慄く様な身体とは反する様にふんわりとした子供の様な口調が特徴的なキャラクターだ。
私が何気にこの世界で一番実物をその目で見てみたいと思っていた人物でもある。それが自販機の前になるとは思ってはいなかったが。
実物、でか〜〜〜〜〜。うわこの感覚なんかデジャヴ。何だっけ。あ、前世スカイツリー出来た時に興味本位で近くまで行ってみたら、想像以上にでっかくてビックリした時のあれだ。すご。横目でチラ見じゃ顔見えないくらいでかい。てかこの大きさに合うサイズの制服あるんだ。でか。すご。
頭の中では信じられないくらい騒がしく話す中、出来るだけ外には出さない様に緑茶のボタンを押す。ガランッと勢いの良い音と共に落ちてきた紙パックを手に取って、そのまましゃがみお釣りに手を伸ばした。
度々ある漫画の登場人物との初遭遇も、内心では大興奮しているものの、回数を重ねて行くたびに表には普通の顔をする事ができる様になって来ていた。しかし毎度あまりにも唐突な為心臓には悪い。次遭遇する時は何かしらの形で事前に知らされてから、満を持して対面したい。
そんな贅沢なことを考えながらお釣りを取り、ふと紫原くんの方を見上げる。
彼がちょうどお札の投入口に5,000円札を入れようとしている瞬間だった。
「え、待って」
声を掛けるつもりはなかったが、考えるよりも先に思わずそんな言葉が口から出てしまった。隣から唐突に声を掛けられた紫原くんはゆっくりとした動作でこちらを見つめ、「え、何」とのんびりとした、だが少し困惑が混じった様な声で応える。
「ごめんなさい急に。でもこの自販機5,000円札入れたらお釣り戻って来ないよ」
「マジ? あぶな〜」
そのままのっそりとした動きで財布に5,000円札を戻す彼の手元に視線をやりながら立ち上がる。「ありがとね〜」と平坦な声で言う紫原くんに「いや、突然ごめんね」と少し緊張しながら言葉を紡いだ。
そのまま何となくぺこりとお辞儀をして、その場から立ち去ろうと歩き出した時背後からまたもやのんびりとした声色の独り言が聞こえる。
「あ〜、小銭ないじゃん」
うわ〜〜〜。めちゃくちゃ去りづらい。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時