検索窓
今日:6 hit、昨日:31 hit、合計:5,978 hit

125話「慣れない言い合い」 ページ25

「夢にしても、」
「桃井さん、これはなんと現実です」
「く、黒子くん!?」

私の言葉を遮ったのは、黒子くんだ。
しかもどうして、そんなことを言ってしまうのか、理解ができなかった。

「桃井さんはあの変な化け物に突然襲われて、殺されそうになったところを明星さんに救われました。化け物も明星さんのお陰で元通りです」
「あのねえ黒子くん、そんな的確に要約しなくても」
「…………」

桃井さんは、びっくりして声も出ないのか、飲み物を両手に包み込んだまま固まっていた。私はと言うと、黒子くんに一歩近づく。桃井さんの隣に座っている黒子くんに、覆い被さるように上から睨みつけた。そして黒子くんは無表情だが、目は怒りに燃えていた。

「夢なら夢でいいって言ったじゃん!私は個々の方針の自由を保障するんだから、邪魔しないで」
「自由なら僕が話したっていいじゃないですか。それにシリウスが喋ってる時点で今更遅いんですよ。桃井さんには特に」
「本人が夢って言ってんだから夢にしとくのも大事なんだよ!!第一、かわいい女の子なんだから大事にしなさいよ!彼氏!」
「そうやって一人になろうとするの、悪い癖ですよね。それに、桃井さんはかわいい女の子ですけど、それだけじゃないです。あと、彼氏じゃなくて友達です」
「なんか今日の黒子くんすごいやだ」
「僕はそうやって自分を大切にしない明星さんが嫌です」

お互いそっぽを向く。嫌なモヤモヤが胸の中を支配していた。こんなに人と言い合いするなんて、いつぶりだろうか。それに何故か、黒子くん相手だと上手く言葉が出てこない。

「あの、明星さん」
「ん?いいよ」

すると、硬直から復活した桃井さんが話しかけてきた。桃井さんは何度か視線を動かして、覚悟を決めたのか最後は私の目を見た。

「か、かっこいいね!」
「………………ん?」
「私、セーラーVのこと大好きで!まさか、似たような人を目の前で見られるとは思わなかった!」

聞き間違えか?と思ったけれど。
桃井さんの顔を見たときに、その表情がプールサイドで黒子くんに向ける表情と同じで、思わず後ずさりをした。

「あんなかっこよく私のこと助けて、お姫さま抱っこまでしてくれるなんて!あーほんと、キュンキュンしちゃった」
「……あの、桃井さん?」
「やだなぁAちゃん。さつきって呼んでよ」
「え?」
「テツくんの言ってることはまたゆっくり聞くから、今日はまずお友達になろ?」

桃井さんは、黄瀬くんより順応が早かった。

126話「それはもう病気」→←124話「ペース配分を考えて欲しい」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白咲ナナ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2023年10月22日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。