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「ここはパリにあるレストレンジ家の屋敷じゃ。きみのお祖父さんは、シリル系レストレンジの最後の一人でもあった」
「……攫われたんですか?」
「そうじゃ。屋敷の人々は、一人娘だったノゼアが男児を産んだことを、それは喜んだ。しかしそれを、面白く思わない人々もいたのじゃ。ユリ、きみたちのその瞳の色は、とても魅力的じゃからの」
ダンブルドアは言い切って、「目を閉じてごらん」とユリに促した。
ユリはそれにしたがって、ぎゅっと目を瞑る。
「さあ、開けなさい」
次に目の前に広がっていたのは、暗い空間だった。
上を見上げると、狭い空が見えて、ここが建物に囲まれた裏路地だということがわかった。
建物の陰の隙間から、ビッグ・ベンが見える。
暗闇に目が慣れるまで、数秒かかった。
目をしぱしぱさせていると、次第に景色が見えてくる。
空間の中心に立っているのは、やはりあの少年だった。
幾分か成長したようで、十歳かそこらに見える。
彼は、こちらを向いて佇んでいた。
闇の中でホワイトブルーが不気味に光って、ユリは思わずあとずさる。
なんとなく足元がひんやりして、下を向き、声にならない悲鳴を上げてダンブルドアに飛びついた。
男が、目を見開いたまま倒れていた。
よく見れば、少年の周りにも何人か倒れている。
「し、しんでる」
ユリの呟きに、ダンブルドアはその肩を抱いて、落ち着かせるようにさすった。
そしてそのまま、ユリに説明する。
「あのあと、彼は売られてロンドンのギャングに辿り着いた。不思議な力を使う少年は、さぞ重宝されたろうのう」
ダンブルドアが左手を掲げ、指鳴りをした。
すると、あたりの景色が歪み、煙のようになって新たな景色を再構築していく。
完成したそれは、またも暗い場所だった。
「違法の賭場じゃよ。ギャングの本拠地で、彼はここに住んでいた」
突然、部屋の中心から光の玉が飛び出して、それがそのまま電灯に点った。
ユリが驚いてそちらを見ると、一人の青年が魔法の杖を掲げていた。
「……誰ですか?」
「ケトルバーン先生じゃ」
「えっ」
ユリが知っている「魔法生物飼育学」のケトルバーン先生は、手足がほとんどないヨボヨボのおじいちゃんなのに。
彼はまだ二本の腕と、一本の脚を持っている若者だった。
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岡P(プロフ) - お話とても面白かったです。この先どうなるのか更新楽しみにしています。 (10月31日 22時) (レス) @page44 id: e3d27a2b53 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - すごく面白くて最高です!応援しています! (9月28日 1時) (レス) @page43 id: cb75ec721c (このIDを非表示/違反報告)
アミ - この小説を1話読む度に、主人公が感じるドキドキ、喜び、切なさ、愛おしさ、全てが臨場感をもって伝わってきて、満ち足りた気持ちになります。あなたの小説に出会えてよかった、そう思える作品でした。続きを読むのをとてもとても楽しみにしています。ご自愛ください。 (8月30日 19時) (レス) id: 2340b31398 (このIDを非表示/違反報告)
エヌエヌ - 最高です!!!!とても面白く、素晴らしい作品だと思いました。ダンブルドアが亡くなったのは6月で、夢主ちゃんのお父さんとの別れは8月前ということはもうそろそろ……??と思いどうなるのか気になってます。続き楽しみに待ってます〜!!! (7月26日 16時) (レス) id: cc01457125 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で1番好きです。更新楽しみにしてます。素敵な出会いをありがとう。 (7月25日 2時) (レス) @page43 id: c7131ab9ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや。 | 作成日時:2023年4月5日 4時