女好き男と男好き女〔森山由孝〕

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中村「・・・まぁ、美味しいです。」
早川「だよな！！」
中村君の言葉に早川君は花を飛ばす勢いで笑う。
何となくそれが犬みたいで思わず笑えば、皆が一斉にこっちを見てきた。

瞳「何か。」
早川「先輩ってわ(ら)うんッスね！！」
瞳「そんなに笑わないように見える？」
早川「はいっ！！！」
中村「ちょっ、早川！？」

中村君が焦ったように早川君に声をかける。
他の部員たちもどこか焦っていて、思わず口角が上がるのが分かった。

瞳「何でそう思うの？」
早川「だって1年生の間でも噂になって(る)っすよ？
美人なのにいつも無表情で、男と遊んで(る)先輩がい(る)か(ら)、
絶対に近づくなって！！」

早川君の言葉に一瞬して皆の空気が凍る。
1人だけ“どうっすか！！”とでもいう風に笑う早川君が場違いだと思われるほどには。
きっと、早川君は“男と遊んでいる”という表現をそのまま取ったのだろう。

瞳「・・・・。貴方は私のことどう思う？怖い？」
早川「まったく。それどこ(ろ)か、スッゲーいい先輩だと思うッス！！」
瞳「そう。・・・馬鹿な子。本当に眩しいわ。」

私が呟いた言葉に中村君が怪訝な表情で見てくる。
それに思わず笑いが込み上げるた。この純粋さは私が捨ててしまったものだから。
人を真っ直ぐに信じることも。人を守ろうと判断することも。
もう私にはないものだ。

それにしても、何故バスケ部にはこんなにも性格の濃い人が集まるのか。
森山君だけでも、まるでギャグのような性格だというのに、
集まったら集まったで全員、まるでアニメのキャラのようだ。

瞳「気にしないでちょうだい。それに、別に取って食うわけじゃないの。
何かに夢中になっている人の夢を取り上げる様な真似だけはしないわ。
そんな権利、私が持ってるはずなんて無いから。」
中村「・・・そうですか。」

中村君が目を逸らしたのを確認すると、机の上の入れ物を片付ける。
それからは自分の席へと戻り、何時ものように課題をやり始めるのだった。

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