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30話 ページ31

「……その話は、私が読んだ書には書かれてなかったなあ。君は何者なんだ?」



それもそのはず、これは俺、即ち王の“今の気持ち”だ。書かれているはずがない。
というか書に書かれるほど俺は有名だったのか。驚いた。まあ実際王を務めていたのは百年前よりももっと前の時代でも王を務めていたんだがな。さすがにそこまでは書かれてないか。



首領の問いにどう答えたらいいか迷い、暫くして口を開いた。しばしの沈黙、首領の真っ直ぐな視線が俺の背に突き刺さる。



「別に、ごく普通の一般人で偉大な友人を持っている幸せものです。」



首領はその答えに溜息をついた。



「幸せ者……ね。もう行きなさい。太宰君と織田君によろしく言っといてくれ。」



それは首領なりの気遣いなのだろうか。俺は素直に肯定し急ぎ足で織田作と太宰のいる場所に向かった。



「確か……«支配者»の名は諸説あるが……A。」



首領がそう呟いたが、俺には聞こえなかった。







俺はとりあえず人気のない路地に向かった。足で行くより、異能で向かった方が早いからだ。
異能を付けておいて本当によかったと思った瞬間だ。



場所は太宰に聞いてある。後はそこに転送系の異能を使って行けばいいだけ。
俺は地面に手をかざし、異能を発動した。



そこで俺はふと、織田作との会話を思い出した。



三年前、俺と織田作が出会った日の話の続きだ。



「一つ、俺の話をしていいか?」



織田作が自分のことを話すなんて、意外だった。いつも聞き手に回り、想像の上の返答をする織田作が、自分を話題に出すというのは俺の中でとても新鮮な気がした。



俺は肯定の意味で首を縦にふり、織田作をじっと見た。織田作は酒を一口のみ、話し始めた。



「俺は、小説家になりたいんだ。」



その一言は俺を驚かせるには充分だった。織田作は続ける。



「俺がマフィアに入る前、気に入った小説をずっと読んでたんだ。ただ下巻がなくてな、俺は話の続きを見たくて探し回ったもんだ。そんなある日俺は下巻について知ってる人に話しかけられてな。
その下巻は最悪だ。と言った。どうしても知りたいなら下巻はお前が書け、ともな。」



何となく、織田作が出会った人に既視感を覚えた。話だけだが、何となくその人のイメージが俺の中で固定されていく。



ああ、そうだ……確かその小説の作者は……




















……夏目漱石、おれのじぃちゃんだ。

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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時

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