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A視点
「なにこれ?」
赤いリボンをほどいて箱を開けると、中には瓶が入っていた。片手に収まるジャム瓶のぐらい大きさで、中には色とりどりのキャンディが入っている。
「わ〜可愛いなこれ!どうしたんだ?」
「エバからの土産だ」
「…ふーん。エバがねえ…ふふふ」
「なにニヤけてんだよ」
「いや〜別に〜。あ、これ甘くて美味しいな!」
口元がどうしても、緩んでいまう。ラクサスはエバからなんて言ってるが、ほんとはラクサスが買ったに違いない。
エバとはたまに連絡を取り合うし、その度にお土産があったら教えてくれる。それなのに、今回は何の連絡もない……ということは、これはラクサスが買ったもので間違いない。
ラクサスは私が甘い物に目がないってことも知ってる。正直に言えばいいものを…可愛いやつめ。
「ほんと美味しいよ。ありがとう」
「礼ならエバに言え」
「そうだな。あはは…」
ラクサスは、ほんとは優しい奴だ…。数年前の事件の直後、私が自暴自棄になって家に引き籠っていた時も、私の好物や綺麗な花を持って来てくれた。
思うように体を動かせず、辛くて泣き出したときは泣き止むまで抱きしめてくれた。
幼馴染から始まり同じギルドの仲間になった。そして、相棒、チームとしてラクサスの側にいた。私はいつしか、ラクサスのことを異性として…
「…好き」
「……は?」
「えーっと、このキャンディ甘くて好きだな〜って。ラクサスも食べるか?」
「そんな甘ったるいもん誰が食うか」
「後からいるって言ってもあげないからな。あーあー、こんなに美味しいのに。ラクサスは食べないのか」
「うぜぇ。黙って食え」
この気持ちを伝えようとは思わない。…こんな私ではラクサスの側にいられない。ラクサスが最強を目指すなら、その隣には弱い奴は似合わない。だから今は、こうしてラクサスと過ごす時間が少しでも長く過ごせるようにと、心から願うばかりだ。
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作者名:わたがし | 作成日時:2020年3月19日 15時