七.不変なる傾慕 -- Raiden_Shogun ページ24
緋桜は、美しい人のために舞うと思います。僕は何となく、そんな気がして……緋桜が似合う人になりたいな、なんて考えながら生きてきました。
僕に名前はありませんでした。物心がついた時、一人ぼっちだったから。どうやって生きてきたかも覚えていません。そんな時、手を差し伸べてくれたのは宮司様でした。宮司様は僕に『A』という素敵な名前をくださいました。僕は自分の名前を誇らしいと思っています。母親のような素敵な宮司様から、一番初めに頂いた贈り物だから。
僕があの方とお会いしたのは、齢十の時でした。
冷たい瞳をした将軍様でした。手短に宮司様と要件について話されたあと、宮司様に問いかけました。
「……彼は?」
「妾が拾ったのじゃよ。無垢な子供を放っておく訳にもいかぬじゃろ?」
「そうですか」
そうして、僕を一瞥してから帰路に着かれました。ですから、お会いしたと言っても『目が合っただけ』だったのです。
否、それでも、彼女は僕の記憶に強く残りました。僕は将軍様を見た瞬間、理解したのです。
あぁ、この方のために桜は咲いているのだ、と。
それから僕は宮司様に将軍様の話をせびるようになりました。彼女はどんな人なのか。どんなことをしてきたのか。どんな風に民に慕われているのか。
次第に宮司様は、もっと内側に踏み込むようなことも教えてくだるようになりました。好きな物とか、嫌いな物とか、得意なこととか、苦手なこととか。神だと崇められ慕われる彼女にも、ちゃんと個性があることに驚きました。
そんなある日、宮司様の元に二人の旅人が現れました。彼は『空』という、美しい名前をもった少年と、『パイモン』と名乗ったふわふわ浮いているちびっ子です。
私は部外者ですから、彼らが話した内容を知りません。宮司様から聞いた話によると、旅人たちは将軍様を救うために来たのだと言います。彼らは正義の味方なのでしょう。
それからすぐでした。稲妻の鎖国が解除され、多くの国と交流するための"光華容彩祭"が開催決定しました。
今日も遅くに帰ってくるのだろう、とヤマを張って、煮込み料理を作っていると、がらりと扉が開いた音がしました。宮司様だろうか、と私はふいにそちらに視線を向けると、そこには将軍様がいらっしゃいました。
「……こんばんは、将軍様。夜更けになんの御用でございましょう?」
「こんばんは。神子を探しているのですが、ここにはいませんか?」
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ