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サザナミと帰った帰り道はやけにどこか物足りなくて、楽しくなくて、
ずっと彼女の話を聞いていても、頭と心は空っぽのままだった。
そして今は、ちゃんとAちゃんに言われたとおり家まで送り届けて、やっと自分の家までの帰路を辿っているところだ。
2人並んで帰っていた時の楽しそうに笑っていたAちゃんの顔が、頭に浮かんではシャボン玉のように消えていく。
さっき見た彼女の顔も続けて浮かんでは、消えていった。
その顔はあまりにも切なげで、儚くて。
そう、まるで……
どこかに行ってしまいそうな。
どこか遠くへ消えてしまいそうな。
そんな気がした。
…………俺さ、自分も認めちゃう程の馬鹿だからさ、
「……言ってくんなきゃ、わかんねぇよ、」
Aちゃんの考えてることも、思ってることも、俺にはわかんねぇんだわ。
突然、いつも送ってもらって悪いし、なんて言われても理解できなくて、認めたくなくて。
でも、それでもAちゃんは簡単に俺の手からするりと抜けて、離れていった。
まるで、昔のように。
お願いだから、あの人と同じ道、行くなよ…
変なこと、考えんなよ…
Aちゃんには俺しかいないように、
俺もAちゃんしかいないんだわ。
そりゃ、兄弟も親も他の友達も幼なじみだっているけどさ。
でも、それでも、1番大切な人はAちゃん、だから。
Aちゃんがいなくなったら、俺、おれ、、
「…………自分、大切にしろよ、、」
本人が聞いているわけでもないのに、小さくそう呟いた。
ーーー
ーー
ー
その後、俺はAちゃんと会わなかった。
……いや、会えなかった。
彼女が、尽く俺の誘いも、連絡も断ったから。
《Aちゃん!今暇?》
《ごめん、今日は1日バイトだから》
《なぁ、どっか行かね?》
《ごめん、私これからトト子ちゃん
と会う約束してるの》
《明日遊びに行ってもいい?》
《ごめん、明日も用事があって家に
いないんだ》
全て《そっか、じゃあまた今度誘うわ》みたいな感じのことを返しておいた。
どこか避けてる感じもしたけど、俺には聞く権利も勇気もないから深くは知らない。
気づけばそんな距離感のまま、5日が過ぎてしまっていた。
その5日目の、今日。
Aちゃんにとっても、俺にとっても大事な日である今日、
俺は、彼女の家の前に立っていた。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時