自由系女子は止まらない

《喧嘩》6 ページ17

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「せ、ぃ…くん…？」


恐る恐る口にした名前にさえ愛しさがこみ上げて


「A！？今行く、動くな！」


焦りの滲む彼の声に涙が溢れる。






「なん、で…？」



やっぱり征君は優しくて

きっとそれは誰にでもそうで

征君にとって当然のことで


だから今も、きっと見えなくて困ってるからって

それだけで。



「全く…本当に…世話のかかる、人だ」



でも、でもね

私知ってる。


征君は誰にでもこんな顔を見せるんじゃない。

誰にでも、声を震わして涙を流して

こんなに優しく強く抱きしめたりする人じゃない。




まだ遅くない？

まだ、間に合いますか？



いや、遅くたって

間に合わなくたって


暗闇に逃げてしまうより、ずっといい。




「征君、ごめ…」


「すまない。本当に…悪かった…」


「え…」



ぎゅう、っと私を抱きしめる力が強くなって

同時に私の心も締め付けられて



「Aが不安でいたことも
寂しい思いをしていることも、わかっていたんだ。

ただ、少し嬉しかった。俺のことだけを考えてくれていることが…嬉しくて、」



やっぱり、同じだった。

がおたんの言う通り、私達はかっこつけてばかりで
なんにもわかってない。




「まるで子供のようだ、と…あの火神に言われるとはね。
だが、その通りだ」



ジッと私を捉え離さない赤い瞳は、何年一緒にいても胸が高鳴る。



「私…私、好きだよ。大好き。愛してるの。

征君を、征君だけを。だから、…どこにも、行かないで

私頑張るから、傍に居させて…っ」



涙声で不格好で、それでも伝えた私の気持ちに

征君は少し笑って


「当然だ。

Aが俺の傍から離れるなんて、許されるわけがないだろう」


涙を流しながら、口づけを落とした。






「がおたんに、謝らなきゃね。
それからお礼も」


「ああ。
だが、『礼とか謝罪とか言いつつ結局仲直りしてイチャイチャしてんの見せつけにくんのはやめろよ』と伝言を預かって…」


「それなら尚更行かなきゃね。
今度みんなで集まろうよ、久しぶりに。

きっと楽しいよ」



「そうだな。
ついでに報告もしようか」


「…？
初喧嘩しました！とか？」



「いいや。赤司Aとして生きていくことの報告だ」


「へぇ…

…へっ！？ぇ、ええ！？
今のって…え、プロポ…えっ、ちょ待っ」


「さぁ、帰ろうか」



私の彼は、やっぱり私よりも大人で

一生敵いそうもありません。



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Fin



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