自由系女子は止まらない

《喧嘩》5 ページ16

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「ごめんね、がおたん。
迷惑かけちゃって…巻き込んじゃって。

もう、いいよ。

ははっ…そうだよ、私は自由なんだもん。

ごめ、ん…っ」



そこまで言って、私の涙腺は限界を迎えた。

だけど征君に涙を見られるのは嫌だった。


だから走って

私を呼ぶ声から逃げて


それでも追いかけてきてはくれない愛しい人の声も
聞こえないフリをした。





もう戻れない。


あの頃にも、昨日にも、あの時にも


「戻れないんだ…

もう、遅いんだ…っ」




我ながら足の速さを評価したくなった。
いや、これは逃げ足と言うのか。

それとも追いかけてこないから、関係ないのか。




残された２人はさぞかし気まずいだろう。

でもそんなこと気にしてる余裕なんて私にはない。


『心変わりするのなら緑間あたりだと思っていたが』


そんなことを思っていたの知らなかった。

否、知りたくなかった。





これでも一途に想ってきたつもりだった。

征君以外は見てこなかったつもりだった。


いや、『つもり』ではきっと伝わらないんだ。


そもそもそれは当然じゃないか。

安心させるだけの気持ちが、態度が
私には足りなかった。




「全部、私が悪い…」




ここはどこだろう？

真っ暗で、何も見えない。

そんな恐怖よりも、独りであることよりも

征君のあの言葉が、顔が

怖くて、悲しくて、それでもまだ愛しい。



息を切らして座り込んだ場所がどこなのかもわからないまま
朝までここにいればなんとか帰れるか

なんて案外呑気に今の状況を飲み込んでいる。



少しして、タッタッタッ…と近づいてくる足音に
無意識に体が強ばって

少しだけ、本当にほんの少しだけ期待しそうになった。


「…なわけ、ないじゃん」


近くまでくることなく止まった足音に安堵して
でも落ち込んで、一体どっちなんだって自分にツッコミを入れたい気分だ。




どれだけ凝らしても広がらない視界。

機能していない左目も、どうやら涙だけは流れる。



「ふっ…ぅ、征くっ、ん…」



勝手に出てくる名前も、もう届かないのだと

私を包む暗闇に全て吸い込まれてしまうのだと

わかっている。

わかっていても、諦めきれない。




「Aっ！」


幻聴まで聞こえてきて

けどそんな幻聴に、夜中なのに近所迷惑だなんて
心の中でツッコミを入れてしまうなんて悲しい。




「っ、はぁ…はっ…A！どこだ！？」



「…えっ…？」


幻聴なんかじゃない。

だって息遣いまで聞こえてくる。

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