自由系女子は止まらない

《喧嘩》4 ページ15

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通り慣れたはずの道のりがいつもよりほんの少し短く感じた。


半同棲状態の征君の家までは歩けば結構な距離で

私とがおたんの間の会話も途切れるようになった。



「お前ら同棲してんじゃないのか」


「同じマンションだよ。
ただお互い仕事が忙しい時は1人で作業したいから私の部屋もある。

まぁそのマンションも私が管理を任されてるんだけどね」




一度はなくなりかけた橙乃財閥も
父さんの築き上げてきた人間関係のおかげでなんとか持ちこたえて
今では立派なものだ。




「家にいんのか？赤司」


「多分。私と同じで外に飲みにでてなければね」



正直家にいる可能性は半分くらいだけど
私はこの後に及んでそれにホッとしている。

どうしたって恐い。

あの冷たい声が耳の奥にこびりついて取れない。


時間が解決してくれる問題ではないとわかっていても
もう少し後の方が…と悪あがきをしてしまいそうになる。



「お、あれか？」


そんな気持ちとは裏腹に見えてきたマンションにがおたんが声を上げる。


「高級マンションって感じだな…」


「オートロックだし警備に力入れてるからね」


これ以上ないほど上がる心拍に冷や汗まで流れ出した。

大きく深呼吸してみても落ち着かなくて、多分顔色の悪い私をがおたんは心配そうに見下げる。


「大丈夫か？
まだ気分悪いのか？」


そう言って私の髪に触れようとしたがおたんの手は


「懐かしい顔だと思えば…ここでなにをしているんだ？」


少し不機嫌な声と、がおたん程ではないけれど大きな手によって阻まれた。





「征君っ…！」


「驚いたな。
ここまで堂々と気移りする姿を見るとは」


「気移り、って…そんなのじゃ…」


「いい、聞きたくない。
好きにしろと言ったのは俺だ。

…そうだ。君は、自由な人だ。このくらい仕方な…」


「っざけんなよ！」



がおたんの、怒りに満ちた大きな声。

征君の、怒りと嫌悪にまみれた視線。



シワ一つなかった綺麗なワイシャツは
がおたんの異様なまでの握力のせいでシワだらけだ。



「離せ。お前にかまっている暇はない」


「こいつが…橙乃がどんな気持ちで泣いてたかも知らずにっ」


「ならば貴様が慰めてやればいいだろう。
わざわざ俺の前に現れて何がしたいんだ？

だが意外だな。
心変わりするのなら緑間あたりだと思っていたが」



「てっめぇ…！」






「もう、いい」


今にも殴りかかりそうながおたんを止める気力も

私にはなかった。

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