アイム・ヰノセント／５ ページ31
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「 意識不明ですが幸い命は…… 」
取り留めた。けれど、別条はないとは言えない。伝えにくそうに医師が眉を顰めた。駆け込んできたあの子の両親は真っ青な顔になって膝から崩れ落ちた。犯人も見つかっていないのだから、その怒りを何処に向ければいいのかわからないのだろう。矛先が向いたのは俺だった。
「 ……貴方が衣更真緒くん？ 」
「 …はい、そうです。 」
知っているふりをするしかない。同じ制服なのに互いを知らないのは、変だろうから。
「 あの子、よく貴方の話をしていたのよ。…まぁ最近は、あまり聞いてないけれど 」
「 ………え？」
何故。だって会ったのは今日が初めてで、あの子の名前もさっき知ったばかりだ。病室のネームプレートが差していたあの子の名前は見覚えがない、新しく記憶に刻むものだったのだから。あの子だって俺のことを知らない筈である。それなのに、何故。
「 …俺が、かわってあげられたら 」
「 …っ！ 」
唇から漏れたその呟きに、あの子のお母さんは息を飲んだ。その音に驚いて目線を上げれば、ぽろぽろと儚い涙が目の前で紡ぎ出されていく。その双眸は誰かに似ていた。思い出せないけれど、誰かに。
「 ま〜くん 」
「 凛月？…あ、失礼します 」
う、と絞り出すような泣き声が聞こえて後ろ髪を引かれる思いで歩き出した。凛月に手招きされて、角を曲がった階段の踊り場に辿り着く。
「 …ねぇ、ま〜くん。 」
「 なんだよ、凛月 」
「 かわってあげられたらなんて、言わないで 」
やはり聞いていたのか。「 ごめん 」と、目を伏せた。何に謝っているのかさえ、今はもうわからないけれど。
「 まだAは生きてる、だから変わってあげられたらなんて言わないでよ。ま〜くんだけでも生きててくれてよかったって思った俺が馬鹿みたいじゃん！なんで、なんでそんなこと言うの、なんで、忘れちゃったの、… 」
「 …ごめん… 」
「 ま〜くんを責めてもしょうがないってわかってる、わかってるけど、なんで、こんなの… 」
何のことを言っているのかさっぱりわからない。けれど、頬を涙が伝う。自分の為に涙を流してまで怒ってくれた吸血鬼は唇を噛み締めていた。あの子が誰で、どうして世界の色がなくなって、どうして自分は泣いているのか。
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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました！ (2018年11月6日 0時) (
レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました； (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…！コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…！ (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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