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幸福追求権/1 ページ2






お決まりの台詞を吐けば、みんなが幸せになってハッピーエンド。バッドエンドの兆しなんてとうに遠ざかって鳴り止まぬ拍手。スタンディングオベーションは当たり前、そんな物語である。



「 ふぁあ、ふ… 」



それは、何時も通りではなかった。


目覚めると、寝足りない感覚と共に何かを思い出す。鳴り止まぬ拍手喝采。何処かで見た様な景色に眩暈を覚えた。夢か幻か、現実か。



酷く、大切なものだった。そんな気がしていた。何かを失ってしまった。そんな気が、していたのだ。
喩えるなら焼却炉に入れられた塵みたいに燃え尽きてしまった。しかしその中には燃えない塵も混じっていた様で、溶けて残った塵が断片的に思い出される。何かが、何処かで、何かが。失ってしまったものさえも忘れてしまったけれど。




笑顔だけが、海馬にしがみついていた。





棺桶から身を起こせば夜闇に包まれた部室が視界いっぱいに広がる。自分は今まで寝ていたのだ。そんなことも頭から飛んでしまうほど、焦りを感じていた。激しくなる動悸と、胸焼けの様な吐き気。何とか冷静を取り戻して空っぽの頭で“ 何か ”を考えていた頃だった。


部室の扉が開かれたのは。



「 あ、零さん!やっと起きたんですね〜 」




___初めて見る女の子だった。ずきんと頭が痛む。きっと、初対面の女の子。脳がぐらぐらと、痙攣を起こすかの様に揺れていた。整った顔に華奢な体。思い出したかのように赤い唇と、その少し下に二つの黒子。口元に二つ黒子がある子なんて、今まで一度も見たことがない。

控え目な光を瞬かせて、その子はどうしたんですか、 なんて問うた。





「 だれ、じゃ? 」


「 え? 」





初対面の女の子にいきなり誰、だなんて失礼だろうか。考えてみたけれど今までこの子には会ったことがなくて、だからこう聞くのは普通のことなんじゃないかと思う。然し何故、この子はこんなに不思議そうな表情をしているのだろう。



「 誰って、覚えてないんですか? 」




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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました! (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました; (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…!コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…! (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました! (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とくめい/ねむい x他1人 | 作者ホームページ:ございません  
作成日時:2018年3月17日 18時

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