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見逃してよオムファタル/3 ページ36

糸は切れても繋がっているものはあるよ、さぁ、ほら
__よく見てみてよ








夜風が濡れた面積をしっかりと冷やしていく。替えの服なんて当然持ってきていなくて、彼が着ていたトレンチコートを借りる羽目になってしまった。

「奏汰ではありませんが、言葉を借りるなら『どざえもん真っしぐら』でしたね」

「…訳は、聞かないんですか?」

軽口を叩く彼に震える歯をカチカチと鳴らしながら、なんとか言葉にする。
流し目でこちらを一瞥した後、渉さんは少し苛立った様子で目を逸らした。

「聞かなくても分かりますよ、…にしても、貴方は男を見る目がありませんねぇ?」

その言葉には、呆れとも怒りともつかない感情が表されていた。

「彼を想って死ぬだなんて、そんな美談。
唯一、私が報われないじゃないですか」

「美談、ですか?」

「えぇ、…羨ましいくらい、綺麗に纏まっているように思えます」

そういえば、彼と観た映画でそういった物語があった。
愛する人を失った主人公がその傷心を埋めるために幸せを探しにいくが、結局は彼の後を追い死んでしまう__確か、そんな物語。思えば彼はその結末に賞賛を贈っていたが、私はしっくりこないどころか、なんて酷いラストなんだと落胆さえ覚えた。


「貴方は、私と幸せになってもらいますよ」


その言葉に、訝しげに眉を潜める。

「…幸せになれるんですか?私なんかと居て」

「えぇ、まぁ貴方の幸せは保証し兼ねますが」

はぁ、と惚けた声が出る。
何を根拠にそんなことが言えるのだろう、そんな疑問を顔に出す私を見て、彼は意地悪そうに目を細めて笑うのだ。


「余所見をせず貴方を見張っているので、当分、彼の所へは行けませんねぇ」


それのどこが、不幸だというのだろうか。
彼はあの映画と私を重ねていて、この物語の登場人物が私とあの人の二人だけだと思い込んでいるらしい。


「私は、貴方が幸せなのか聞いたんですよ」


そう言えば、彼は面食らったように目を丸めた。
そして、言葉の意味がわかると、へらりと気の抜けたように笑ってみせた。





「…やはり、男を見る目がありませんね」





そんな彼は、女を見る目がない。

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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました! (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました; (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…!コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…! (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました! (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とくめい/ねむい x他1人 | 作者ホームページ:ございません  
作成日時:2018年3月17日 18時

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