ブライダルベールは枯れてしまいました

Algún día seré tu príncipe／３ ページ21

，




敬人との話は、特筆することでもないので省かせてもらおうと思う。
だって、彼女が敬人に「 英智さんって誰ですか 」と尋ねてきたという話なんて、誰も聞きたくないでしょう？


「 ……なんで 」


なんで、どうして。何が足りなかったのか。きっと、僕の所為だ。家に帰ってからはその理由を突き止めるためにずっと調べ物をしていた。手が震えて使い物にならないけれど、どうにかこの状況を打破したくて。



，




混濁するような意識の中で目に焼き付いたその病名は、矢張り僕を嘲笑うように心臓を動かすのだ。




，




遠い遠い記憶の旅。夢を見た。普段あまり見ないそれは僕を焦らせるのに丁度いい。寧ろ眠ることができただけでも感謝しなければならない。


「 ……私も、一目惚れ、でした 」


そうか。そうだった。一目惚れ。僕も、彼女も。初めて見たときに電流が走ったように体が震えて、見る度に惹かれていった。恋の科は恐ろしい。実感したのはやはり半年前からだ。




，





目覚めると頬には涙が伝っていて、枕に小さな染みが出来ていた。少し前に流行った映画みたいだと笑ってみるけれど、彼女の名前は寧ろ痛いほどに僕の心を締め付けている。よかった、彼女と僕の位置が反対ではなくて。忘れたとしても彼女がいなくなるのは耐えられない。そう、一目惚れなのだ。彼女のことが記憶から抹消されたとしても、その一瞬で恋に落ちていってしまうのだ。１日１日、初めての恋をする様に。


彼女が未だ僕のことを好きでいてくれたら、僕はきっとこの世界から消えるべきではない。理由はごく簡単で、彼女が愛するストーリーにバッドエンドは存在しないのだから。



ずっとすき、と涙を零したってそれを拭ってくれる人なんてどこにもいない。





，

Algún día seré tu príncipe／４→←Algún día seré tu príncipe／２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す