オーソドックスな恋模様／１ ページ15
昔から、碌な夢しか見れやしない。
最近で言うなら、仕事に追われる夢や眼鏡が見つからない夢など、妙に現実味を帯びており毎朝起きる度に少し疲労してしまう。
そのせいか、自然と早い時刻に目が覚めてしまう。
「蓮巳先輩は、夢でもリアリストなんですね。」
そんな話をした時のAの感想が、妙にしっくり来た。上手いこと言うものだと感心さえした。
然し、どうせ夢ならば、少しは浮世離れしたものが見たい。空を飛ぶ夢なんかは疲れているときによく見るものだと聞いたが、それなら俺は毎夜その夢を見ても可笑しくないはずだろう。
「私もそう言った夢はなかなか見れませんよ」
「そうなのか、…そういえば、Aはどんな夢をよく見るんだ？」
「えっ？…えーと、」
Aは逡巡するように口をもごもごさせる。
何を躊躇っているのか、そんな態度を見せられるとかえって気になってしまう。
言え、と催促すれば、観念したようにぽつりぽつりと話し出す。
「笑わないでくださいよ」
「あぁ」
「…蓮巳先輩と商店街のカフェでお茶する話です」
「そうか＿＿＿ん？俺と言ったか今」
驚いて彼女を見れば、耳まで真っ赤に染め上げ、恥ずかしそうに俯いていた。
まさか、そんな夢を、と少し呆れる気持ちと共に、こいつは俺以上のリアリストなのではないかという疑惑さえも浮上した。
「いっそ笑ってください…」
「いや、笑いはしないが…そんなもの夢に見る必要すら無いと思うが…」
俺の言葉に、Aは否定するように大きく首を振った。
「そんな事ありませんよ。蓮巳先輩は最近忙しくて、デ……お、お出かけどころじゃ無いし、それに夢でも蓮巳先輩に会えるだけで、すごく幸せで…」
「別にデートでも構わないが…そうか、なんか、それ起きた時虚しくならないのか」
「人が必死に目を背けてた事実になんて事を…」
図星だったか。
そんな彼女に照れ臭い気持ちと共に、申し訳ない気持ちが湧いてくる。そういえば、最近二人で会う機会もめっきり減ってしまった。
「…そうだな、明日は丁度学校も部活もない」
羞恥から俯いていた彼女が、反射的に顔を上げた。
その期待の込められた瞳が一心に自分へと注がれる。
「デートするか」
「…！やった！」
掌を合わせ喜ぶ彼女。
それに大袈裟だと笑う自分の足取りも、確かに浮ついていた。
＿＿今日はいい夢が見られそうだと、なんの根拠もなくそんなことすら考えていたのだ。
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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました！ (2018年11月6日 0時) (
レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました； (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…！コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…！ (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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