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ごめんね。と呟き晃牙くんを見送り棺桶の横に腰を下ろした。
「______という訳で、目は覚めた?」
「それはもう驚く程に覚醒しておるよ」
「随分と可愛い口調になったね?」
「うむ……別に可愛いを狙った訳じゃないんじゃがのう」
零くんは棺桶を跨ぎ床に腰を下ろした。
「何があったかは今は聞かないけどとりあえず頑張ったね、零くん」
「ん」
よしよしと頭を撫でればコテンッと私の肩にもたれかかって来た零くんは小さく笑を零した。
「懐かしいのう」
「……なんかその口調だと強く断れないわね。ほら、距離が近いって離て……と言いたい所だけど」
「……?」
「私、最後に甘やかしてあげるなんて言っちゃったし」
「ああ」
零くんは思い出したと言うかのような声を出した。
「なら、キスしてくれよ」
腕をぎゅっと掴まれ、片方の手は指を絡めるよう握られる。
「零くん、それ私たちの関係じゃ無理なんだけど?」
「あぁ?Aさんも気づいてるだろう、俺がAさんの事好きって。会う度に言ってるんだしよ」
もう顔を動かしたらキスなんて簡単にできる距離まで顔を近づけられた。
「…………零くん、私彼氏いるからキスはできないわよ」
「ッ……は?もしかしてまだ別れてなかったのか?」
「うん。最近の彼心を改めたみたいで……前より良好な関係を築けてると思うの」
ふふっと笑い零くんの胸板を軽く押した。
「……あぁ、ちょっと顔見ないで。恥ずかしいから」
顔をパタパタと仰ぎその場から立ち上がった。
本当はもうとっくに別れてるし、零くんに言ったあの後すぐに別れたのだ。けど今は嘘をつかせて欲しい。
「零くんきっとそれは迷いよ。他の女性の方が魅力的だと思う。それに今の私は彼がいて凄く幸せなの。他の人をそういう目で見られないくらい」
恥ずかしそうに笑い零くんの顔をチラッと見た。
「…………」
「…ッ」
けど……それは……
「………………」
初めて見た、本当に傷ついたような顔を。
その表情に耐えきれなくなり早くここから出たくて仕方がなかった。
「ごめんなさい。じゃあね、零くん」
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作者名:X | 作成日時:2023年5月5日 21時