風呂場からたんぽぽが生まれました。【我妻善逸】

たんぽぽと15 ページ16

由「A、お昼食べよう」


『今日購買ー』


由「じゃあ私にいも串買ってきてよ」


『やだ』


そんなツッコミを入れながら鞄から財布を取り出す。


『あれ？』


鞄の中には教科書類と長芋しか入ってなかった。


私は長芋を取り出すと、


『ねぇ、由……これって食べろってことかな？』


由「何で長芋なの？じゃがいもにしてよ」


そこじゃねぇわ。


これは確実に財布を忘れたな……。


くそ、何で由の弁当は梅干しオンリーなんだよ。


『由……金貸して』


由「今日持ってきてないよ。梅干しならあるけど食べる？」


『大丈夫』



仕方ない……購買のおばちゃんに色仕掛けするしかないようだな……。



私は購買までダッシュした。



駄目だ……あんな優しくて可愛いおばちゃんに色仕掛けで金出さないで買うなんて良心が傷つけられる……。


今日は我慢するしかないな……。




善逸「A」

『ん？』


え、何で善逸が居るの？


善逸の手には財布が握られていた。


『もしかして財布ごとカツアゲしたの？やめときなって……すぐ返してきなさい！』

善逸「違うよ！Aが財布忘れたから届けに来たんだよ！！」



『え……』


どうしよう……善逸が天使に見える……！


『でも、何でボロボロなの？』


善逸「隣の家の犬に追いかけられたんだよぉ！！」


隣の家の犬って……ゴンザレスのことか。

ゴンザレスは大人しい優しい犬なのに……あぁ、たんぽぽと見間違えたのか。


『とりあえず、ありがとう……そしてお疲れ様』


善逸「本当だよ！なんでそこだけ抜けてんだよ！」



ボロボロすぎて声が枯れている。


そうとう大声出して逃げたんだな。



『ちょっと待ってて』



私は購買に向かうと、


『これとこれとこれ下さい。』


「ありがとう！420円だよ」


お金を渡してパンと飴を貰った。



『お待たせー、はい、これ』


私はコロッケパンとのど飴を渡した。


善逸「え、いいの？」


『うん、お礼……あと、早く声治しなよ。善逸が静かだと、その……落ち着かないし』


急に照れくさくなりそっぽを向いた。



善逸「あ、ありがとう」


善逸はゆっくりと受け取ると笑った。



なんだよ……そんな笑顔も出来るじゃん。



『ほら、気をつけて帰りな』


善逸「うん、もう忘れ物しないでよ！」


『わかったよ』


私は善逸の姿が見えなくなるまで見送った。


善逸の笑顔も見れたし……たまには忘れ物もいいかな。

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