シュウ ページ18
「"恨まないでいてくれてありがとう。そして、ごめんな。どうか、幸せになってくれ。俺は、お前を心の底から愛してる。"」
「これがお前の兄さん。シュウとの約束だ。」
あの日の出来事を全て話し終え、俺の横に座るAの方を見る。
Aは、静かに涙を流していた。
綺麗な瞳からは大粒の涙が頬を流れ、服の上にシミを作っていく。
『私は……私は兄さんがいなくなるのを、望んでなんかいなかった……!一緒にいたかったのに……!!』
「それほど、お前のことを愛してたんだよ。シュウがやらなければ、お前は死んでいたんだ。」
『っ……!!……でも…!』
ばっと俺の方を向き、さらに泣き始めてしまう。
Aにとってシュウは、とてもいい兄さんだったんだろう。
もしかしたら、俺があの時止めていたり、あいつに別な方法を考えてあげられていたら、こうなることは回避できたのかもしれない。
あいつの話を聞いておきながら、何もできやしなかったんだ。俺は。
「ごめんな。A。俺もこの話を聞いておきながら、シュウを止めることができなかった。お前を、お前の一族を助けてやれなかった。」
そう言って頭を撫でてやると、Aは涙を手で拭いながら必死に声を絞り出した。
『先生は……悪く、ない……。私が……私が悪いんだ……!私が……!』
拭っても拭っても、次から次へと流れ落ちる涙。
こいつ……自分が悪いって、"忌み子だから"ってことをさしてんのかな。
そう思うと、どうしても苦しくなってAを優しく抱きしめる。
「お前は悪くないよ。大丈夫。」
『でもっ……でもぉ……!!』
そこからAは、声を出して泣き始めた。
どれくらい長い間、溜め込んできたんだろう。辛い思いを抱えてきたんだろう。
でも、これからも、Aの胸にはこの出来事が残るだろう。
けど、その出来事を少しでも軽くできるような、楽しいことが増えていけばいいな。
しばらくしてAは泣き止み、泣き腫らした目で俺を見つめ、微笑んだ。
『カカシ先生。兄さんのこと、話してくれてありがとうございます。私、長いこと兄さんがなんで一族を殺して、私だけ残したか知りたかったんです。』
『私、兄さんのこと信じてて良かった。やっぱり、兄さんは優しい兄さんだった。』
その笑みは、無理して作っているようにしか見えなかったけど、Aの言葉は本心そのものだろう。
最後に一言また明日と言葉を交わし、お互いの帰路についた。
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眠 - うおっめっちゃええやん・・・この作品一気に読み進めよー! (2021年10月6日 18時) (レス) @page2 id: cfd8dfa5f7 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - ミルク さん» まさか2年前の作品にコメントが来ると思わず、びっくりしてしまいました!昔書いたものなので今よりももっと拙い文章ではありますが、参考の域をこえなければ、参考にしてくださって構いません。私も嬉しい限りです! (2020年10月31日 16時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
ミルク - 作品を読んで感動しました!作品を参考してよろしいですか?? (2020年10月31日 12時) (レス) id: 243dd4bfbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2018年5月26日 22時