思春期、赤司君の憂鬱。

憂鬱と気遣い ページ8

気付いた時にはもう既に遅かったけど、仕方がない。何かあったら赤司君を呼べばいい。


意を決してドアを開ければ、脱衣場と見られるところにちょんと置いてあったスウェットと、それから






「え、下着？」






ちょっと待って、なんであるの。まさかご家族の物とかじゃないでしょうね、気まずいわ。
いや、でも前に家族はお父さんだけって言っていたから、それはないか。

恐る恐る手に取ると、未使用であるとはっきりわかったし、それからこの無地で白いものが24時間営業の便利屋さんで売られていることにやっと気付いた。


それから、赤司君がさっき外へ行った理由に気付いた。

……これ、どんな顔して買ったのよ赤司君。






.






「A」


「赤司部長、やばいっすまじ尊敬っす」


「湯加減はどうだった？」


「スルーですか」






バスルームから出てうろうろと彷徨っていれば、廊下にいた赤司君に声をかけられた。

やばいよ、どんだけ紳士なのこの人。
もう尊敬しかできない。



赤司君の後ろを歩きながらも、黄瀬君の真似をして話し掛ければ似てない、と一蹴されてしまった。

結構似てると思ってたんだけどな。






「なんていうかさ、赤司君のモテる秘訣がようやくわかった」


「なんだ、喧嘩売っているのか」


「ちがうちがう、これ純粋に褒めてるんだよ」






通された部屋は多分リビングなんだろうけど、なんかもう次元が違いすぎて溜息すらでない。
もしかしたら息を吸っちゃいけないのかもって思うレベル。


おずおずとソファーに座れば、紅茶が入っているであろうティーカップを差し出されて、なんかもうすごい。

同じ人間なのが申し訳ないです。






「A、衣類は洗濯してしまったけど、よかった？」


「え、わざわざそんなことまでして下さったんですか部長」


「……その部長呼びがなんかムカつくな」






怒らないでよ赤司君、なんて茶化しながら飲んだ紅茶は、なんていうか最高に美味しい。

今度みんなで赤司家に押しかけようかと思ったけど、それは流石に怒られそうだからやめておこう。

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