ひよこ ＃172 ページ29
.
「 お、はよ... 」
深呼吸をゆっくりして。
私はドアを開けて、ばつが悪そうに笑った。
「 A... 」
「 おはよ〜、俺も来たよ〜って聞いてないかぁ 」
私を見て固まる教室の中、あははとゆるく笑う薫の声だけが響く。薫はぽんと軽く私の肩を叩くと自席へ向かった。
そんなゆるい声で、何人かがハッとしたのか次々と私のもとへ集まってきた。
「 はよ!よく来たな、お前頑張ったよ!! 」
「 五奇人にやられたのに、すげえな! 」
「 本当よかった! 」
そんな言葉たちに私は当たり障りのない言葉を返す。少し、嫌な気持ちだ。
仕向けられたことだとしても、友達と悪口を嬉々として目の前で話されるのが気分がいいはずがない。
その中で、奥の方で未だに固まっている千秋や紅郎くんを見つけた。
私は彼らと目が合った瞬間、私に色々な言葉をかけるクラスメイトの間をすり抜けて、その元へと行った。
「 A... 」
「 ...ごめんね、ずっと休んでて 」
私がそう言うと、ふるふると小さな子供のように千秋は頭を振る。紅郎くんは心底嬉しそうに千秋を小突いた。
小突かれた千秋は私を見て感極まったような、嬉しそうな、泣きそうな顔をした。
それを見て、私はこんなに心配させてたんだなぁ、なんて思う。
「 ...俺、Aがいない間、頑張ったんだ 」
ぽつりと呟くように、突然千秋が言った。
「 俺が憧れたヒーローと俺は全然違くて。流星隊のメンバーからは疎まれて、可愛がってた後輩に幻滅されて......友達が壊れたとき何もできなくて。自分はどうすればいいのかわからなかった。
でも俺、やっと、誰かのヒーローになれた気がするんだ 」
それを聞いたとき、奏汰くんのことだと思った。前から千秋は、奏汰くんのことを気にかけていたから。
...そっか、千秋は私がいない間に葛藤して、自分が正しいと思ったことをやったんだ。
「 ...だから、今度こそ、俺はAのヒーローになりたい 」
そう言って真っ直ぐ私を見た彼は、もう私の知っている臆病な瞳じゃなかった。
「 ...千秋は、前から私のヒーローだよ。夢ノ咲に入って最初に声をかけてくれたのが千秋だった。たかがそんなことって思うかもしれないけど...私にとってはすっごく嬉しくて安心したんだ。だから、ありがとう 」
ふわりと笑えば、千秋は少しだけ照れたように笑い返した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 896人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ワルツ - 素晴らしい (2020年6月21日 19時) (
レス) id: cb21dd1047 (このIDを非表示/違反報告)
あるみかん(プロフ) - 透さん» ありがとうございます！更新速度ころころ変わりますが、どうぞよろしくお願いします。 (2020年4月14日 18時) (レス) id: 4fe8f05fec (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - とっても素晴らしい作品でした！！更新頑張ってください…！待っています(*^^*) (2020年4月3日 2時) (レス) id: a39e9ef544 (このIDを非表示/違反報告)
あるみかん(プロフ) - あんころ餅さん» ありがとうございます！一気読み大変だったと思います、お疲れ様です笑 ご期待に添えるよう頑張ります。 (2020年3月23日 22時) (レス) id: 4fe8f05fec (このIDを非表示/違反報告)
あんころ餅 - こんちには！！ひよこのワルツ最初っからイッキ見してしまいました！！とても面白いでス！！これからの展開にワクワクしてます！！更新大変かもしれないけど頑張って下さい！！他の作品もとても面白いでス！！ (2020年3月23日 15時) (レス) id: cda0ebd32a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あるみかん x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=48be83eaada675e79ed496ea5cdf8f4f...
作成日時：2019年8月2日 23時
