ひよこ #171 ページ28
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「 え... 」
「 Aちゃんがその友達のことを大切に想うように、友達だって君のことを大切に想ってる。大切な人に笑っててほしいって思うのは当然のことじゃん 」
薫の言葉に、自然とその言葉を受け入れている自分がいた。
それでも、私は私を許すわけにはいかなくて。自分でもめんどくさい女だとつくづく思うけれど、それは曲げられない。
「 ......だとしても、笑う資格はないよ 」
「 だったら 」
ほとんど私の言葉が終わらないうちに薫が次の言葉を発した。
「 罪滅ぼしをするとかでも、なんでもいい。君が笑えるなら、なんでも。なんでもいいから、笑って 」
“笑って”
なんでもないような言葉。ありきたりで、ありふれた言葉。なのに、なぜかその時の私には強く響いた。
笑って、と求められていることが許可を与えられた気がしたから。
そんなの、私にとって都合のいい妄想でしかない。...だけど、もし。もし今、私に笑う資格が与えられたとしたら。
私は笑って、いいのだろうか。
「 !! 」
薫が私の顔を見て驚いたように目を丸くさせる。今の私、きっとすっごくぶさいくだ。それで驚かせちゃったかな。頭の片隅でそんなことを考えた。
熱いものが頰を伝って止まらない。自分の口角が確かに上がっているのがわかる。これじゃあ泣いてるのか笑ってるのか、わかんないな。
「 ...宗、っ...!! 」
私は初めて、宗やおばあちゃん以外の人に涙を見せたかもしれない。私はいつからこんなに泣き虫になってしまったのだろう。
「 ...嫌だったら嫌って言ってね 」
薫はそれだけ言うと、私を抱き寄せて優しく私の背中を叩いた。私はされるがまま、泣きじゃくった。失礼だとわかっていたけれど、宗もこうやって何も言わずにそばに居てくれたな、なんて考えた。
「 .....そろそろ大丈夫?早くしないとホームルーム始まるし、あっちから出てこられても気まずいでしょ 」
「 ...うん、大丈夫。ありがとうね 」
薫の言うことはもっともだ。私は涙を拭くと離れた。......今冷静になったけど、側からみたら私、遊んでる女みたいじゃない...!?付き合ってもない男子に抱きしめて慰めてもらうとか痴女だ、私...!!
「 ...なんか愉快なこと考えてない? 」
「 えっ!?いや、なんでも... 」
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ワルツ - 素晴らしい (2020年6月21日 19時) (レス) id: cb21dd1047 (このIDを非表示/違反報告)
あるみかん(プロフ) - 透さん» ありがとうございます!更新速度ころころ変わりますが、どうぞよろしくお願いします。 (2020年4月14日 18時) (レス) id: 4fe8f05fec (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - とっても素晴らしい作品でした!!更新頑張ってください…!待っています(*^^*) (2020年4月3日 2時) (レス) id: a39e9ef544 (このIDを非表示/違反報告)
あるみかん(プロフ) - あんころ餅さん» ありがとうございます!一気読み大変だったと思います、お疲れ様です笑 ご期待に添えるよう頑張ります。 (2020年3月23日 22時) (レス) id: 4fe8f05fec (このIDを非表示/違反報告)
あんころ餅 - こんちには!!ひよこのワルツ最初っからイッキ見してしまいました!!とても面白いでス!!これからの展開にワクワクしてます!!更新大変かもしれないけど頑張って下さい!!他の作品もとても面白いでス!! (2020年3月23日 15時) (レス) id: cda0ebd32a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるみかん x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=48be83eaada675e79ed496ea5cdf8f4f...
作成日時:2019年8月2日 23時