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呼ぶ声 ページ15

Aはその時間たびたび微笑を見せた。レオナはぶっきらぼうな態度を取るばかりで、しかしそれを不快に思うことはなく、ただ会話を楽しんでいた。

己の癖毛を撫でつけ、緑色の目線を下げる。なぁ、と気だるげに声をかけるレオナにAは返事をした。

「なんでてめぇは烏……クロウリーに応えたんだ?」

「――」

それは、今朝の続きだ。レオナから口火を切った。それまでの雰囲気を口を閉じることで終わらせ、今こそ向き合うことにした。

ゆるりと目線を上げ、再び視線は交差する。縋るような目つきに今度はAが応える番だ。

レオナはAと再会してから「応え」を口にしている。それはAがずっと気づかなかったレオナの呼びかけなんだろうか。

あぁ、そうなのか。レオナはずっとAを呼んでいたのだ。


『レオナ様。もし、何か事が起きましたら何を差し置いてもいい、その時は私が許しを乞います。ですから真っ先に私の名を呼んでくだされ。呼べばすぐにこのAはレオナ様のお側に駆けつけます』


エメラルドのループタイを贈ったレオナにAを捧げた日の……遠い約束を守って、呼んでいた―――。


「っ……申し訳ございません……私は、なんと愚かなことを……!」

たちまち膝から崩れ落ちる。許し難い己の罪。それが更に重く、のしかかった。たとえレオナが許してもこれは一生Aが許せない。

あまりの憤怒、そして罪悪感に心が苛まれる。何度も何度もレオナに謝罪を繰り返し、そのたびに涙を流す。

「クロウリー様に応えたのはかつてあなたに少しだけ……足りない己の知識で物事を教えた日々に焦がれ、あなたとの思い出に縋りたかったのです……!」

なんて、浅ましい。レオナの心を裏切ったくせに、過ごした日々に縋ろうとは。
恥だ。許し難い罪だ。

コツ、と靴音が響く。気がつくとレオナは階段を降りて目の前に立っていた。顔を上げるAに手を伸ばし、優しくその涙を拭う。


「そうなのか……」

ぽつりと言葉がこぼれ落ちた。

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竹原洸(プロフ) - 続き…見たいです…楽しいです…幸せです…あっ禁断症状がぁぁぁ!! (2022年8月21日 23時) (レス) @page18 id: de670ee21e (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。更新楽しみにして待っています! (2020年9月16日 21時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁の雨 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年7月22日 17時

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