第207話「二つ数えて__」少女 ページ19
「ねぇいろはちゃん、見回りは兄様達にお任せして私達は街を見て回りませんこと?」
ビルから出たところで、くるりと回ったかと思うとそう、妖美に微笑み乍らそう云ったナオミさんに、私は聞き返す。
「街を?」
「えぇ。何方にせよ、私達は事務員なので見回りは管轄外ですし。それに、いろはちゃんが私達に着くことになった理由は親睦を深める為でしょう?なら、
ことん、と首を傾げて私に意見を求めてくるナオミさんに、私は思わず納得してしまう。
「でぇと……!!」
「そうだね、国木田さんには僕達が説明しておくから二人で楽しンでおいでよ。」
目を輝かせていた私に、谷崎さんは優しく微笑んで下さる。
彼の優しさが、じんわりとした温かさとなって私の心を温めていく。
ゆっくりと、春の訪れを告げる風のように。
「善いんですか……?」
控えめに聞き返した私に、谷崎さんと中島さんは微笑んで頷く。
お二人の表情を観たナオミさんは、私の手を取ると走り出す。
「わっ!?」
「行きましょう、いろはちゃん!!」
そう云った彼女の横顔が、私の中の知らない彼女の姿と重なる。
……そんな、訳が無い。
だってこの間知り合ったばかりの筈で。
彼女が気をかけてくれてるのも、ただの善意の筈だ。
私の中の、知らない私が耳打ちする。
『二つ数えてご覧。そしたらほら__』
平和な世界は、壊れていく。
幸せな
そう云う
意味は分からない。
……でも、知ってはいけないことな気がした。
「いろはちゃん、目を閉じて二つ数えて下さいまし!」
「二つ、ですか?」
ゆっくりと手を引かれ歩みを進めながら一つ、二つと数を数えて、それからゆっくりと目を開ける。
……すると、其処には廃墟が広がっていた。
「なっ……!?」
『ほぅら、私は教えてあげたのに。』
悪魔は、もう一人の私は、微笑んでいた。
何処か寂しくて悲しい匂いが隠しきれていない、そんな微笑みだった。
第207話「二つ数えて夢が終わる。」
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投稿ミスってました!申し訳ないです!;;
第208話「獅子の贈り物」→←第206話「最初は壱から」少女
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作者名:業猫 | 作成日時:2020年1月6日 15時