第164話「夜叉白雪と女王」夢主 ページ22
「……何しに来たの、いろは姉さま。」
ぎろりと私を睨みつける鏡花ちゃんに、私は少し肩を竦めて見せる。
「安心して、貴女を光の世界に戻しに来た訳じゃ無いから。私は敦くんと違って其処までのお人好しじゃないの。人にはその人に有った世界が有るものだしね。」
「……なら、何をしに……?」
私は近くに有った折り畳み式の椅子に腰かけると、何時もの様に微笑んで答える。
相手が衰弱していようと精神的に参って居ようと、私には関係ない。
相手が欲しいんじゃなければ、関係ない。
「……敦くんの居場所を探ってる。知ってる情報全てを吐きなさい。命令です。」
「私には、いろは姉さまの命令を聞く義理も理由も無い。」
「その通り。私は貴方の上司じゃなければ友人でもない。そして……貴方自身に、興味はない。」
私はそう云うと、電話を取り出す。
折り畳み式の、今ではとても珍しい型のものだ。
「其れ……は……!」
……そう、鏡花ちゃんのご両親の形見である携帯電話だ。
其れを開くと、左手に持つ。其れから右手で自分の……マフィアの人と連絡する様に使っていた電話を取り出すと、鏡花ちゃんの電話に掛けた。
「……夜叉白雪。泉鏡花が、敦くんに関する情報を吐くまで殺さない程度に拷問しなさい。」
私の声に反応した夜叉白雪は姿を現すと、鏡花ちゃんの首筋に刀を____
「……判った!話す!話す、だから……夜叉を、止めっ、止めて……!」
私は少し微笑んで見せる。
「夜叉白雪、命令を取り消します。但し泉鏡花に不審な行動が見られたら……直ぐに処分する様に。」
私の血は黒い。真っ黒だ。
私と彼女は似ている。
血の色も、匂いも、力の無さまでも……。
でも、私と彼女は違う。
違う点は……
「……鏡花ちゃん。鏡花ちゃんは、私と違ってまだ失ってない。まだ間に合う。……大丈夫。貴女は、向いては居なくても光の中で生きるべき存在なのだから。望むなら、手を貸してあげても善い。」
まだ、彼女は終わっていないのだ。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時