第111話「タレコミの真実」夢主 ページ18
「うーん…特に目立ったとこはないなぁ…」
「…そうだね。逆に怪しいな…ソル、何かいい異能は？」
「うーん…心を読むような異能は無いかなぁ…」
「そう…で、鏡花ちゃん」
「ふご？」
「…もう満足？」
私は一人半歩遅れてクレープを頬張りながら付いてくる鏡花ちゃんに半分呆れながらそう云う。
…調査開始から約半日経つが特に進展はなく、ずっと鏡花ちゃんがそわそわしていたので、カモフラージュにもなるし…と買って上げたクレープを食べていたのだった。
……ちなみに今鏡花ちゃんが頬張っているのは本日3つ目のクレープだ。
「…甘いのは、好き。」
「うん、そうだね…私も甘味は好き…だけど食べ過ぎじゃない？」
「あはは……」
何かを思い出したらしく苦笑いする敦くんを視界の隅に見ながら、私は大きな溜息を吐いた。
このペースだと、情報を掴むより先に私達の財布が底をつきそうである。
…経費として請求しようかな。
なんて思っていた時……
「あっ、いろは、敦さん、彼が路地裏に入っていったよ。追いかけるかい？」
「…あの先は行き止まりだった筈。それにあそこにはこの辺りのお店の裏口ぐらいしか無かったはず……。よし、ソルと鏡花ちゃんはここで待機。…行こう、追いかけるよ、敦くん。」
「うん！」
私達は、思いっきり油断していた。
既に敵の手中にあったのだ。
「…どうも、今日は一日付けてくれて？」
「……!?」
ここは路地裏。
人の目もない。そして恐らく敵のホームグラウンドで……そこに居たのは、
「久しぶりですね、武装探偵社の皆さん？」
「…嗚呼、そういうこと＿＿。どうも、一年ぶりですね、“恋人殺し”の三浦哲也さん？」
そう、二人の片割れである三浦哲也は…私と谷崎さんで一年ほど前解決した殺人事件の犯人なのである。
この街では再犯なんて山ほど起こる。だから対して気に留めても無かったが…＿＿
「……じゃあ、復讐するだけの、為に？」
「“だけ”じゃあねぇよ！」
怒りの色に顔を染めた“そいつ”は、そう噛みつくように云った。
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作者名：業猫 | 作成日時：2019年7月10日 12時
