番外編「潜入(マフィア時代)」夢主 ページ48
「……芥川さんと潜入する、ですか?」
「嗚呼。潜入に関しては芥川君よりいろはの方が優れている。ちゃんと指導してくれ。頼んだよ。」
「は。仰せのままに……__。」
……とはいえ、芥川さんは仮にも兄弟子な訳で、更に芥川さんは自分より弱い者を嫌う。
私の指導をちゃんと聞いてくれるのだろうか……というか、二人で潜入?しかも暗殺でもない?
暗殺ならばいざとなれば虐殺してしまえばいいものの、今回は敵の組織が大きいので二人でするには無理がある。
よって、内部情報を探るための潜入なのだが……
「……何故
……まぁそうなる訳です。
太宰さんなら判るだろうし、一体何を考えていらっしゃるのやら。
「太宰さんの命なので従って貰います。……さて、先ず第一に今回は一人も殺さぬことが重要です。……良いですか、芥川さん。私達がミスを犯せば、些細な事だったとしても太宰さんの足を引っ張る事になります。……ですので、失敗は許されません。」
「太宰さんの為ならば……承知。」
矢張り“太宰さん”は私達にとってはパワーワードである、という予想が外れていなくて何よりだ。
……さて、こんな風に始まった潜入だったのだが……結論だけ云うと、まぁ大失敗である。
芥川さんが潜入早々、見張りを殺してしまい仕方なく二人だけで全滅させなければいけなくなってしまう。
私とラブは勿論無傷だが、芥川さんは詳細については割愛するが重傷である。
「……芥川君」
「太宰さ……、……!?」
芥川さんが横たわる病室に入ってきた太宰さんは、そのまま芥川さんの頬を殴る。
私はというと……何も云わず、ただ頭を下げていた。
「……いろはに云われなかったの?“殺しは厳禁だ”と。云われたよね?潜入に関してはいろはが強者だ。それに従わなかったと聞いたよ。……失望した。」
そう冷たく云い放つ太宰さんに、芥川さんはただ悔しそうに目を伏せている。
「……いろはも。芥川君如き操れなくてどうする。せめて芥川君にも異能を展開位するべきだ。」
「申し訳ございません……。」
それだけ云うと、太宰さんは部屋から出ていく。
……「仕事が増えた」と文句を云いながら。
「……悪かった。」
「……私も御免なさい。自分の事に一杯で……。」
……こうして、潜入は失敗に終わったのだった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時