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冬を超えて咲く花 -1- ページ43

2人の間に暫しの沈黙が流れる。

先に行動を起こしたのはエレンだった。

エレンが立ち上がるのと同時にユキも上から退く。

エレン「やっと素直に言ったな」

ぐしぐしと雑に、どこまでも優しい手で頭を撫でまわされる。

ユキは咄嗟にエレンの顔を窺ったが、そこにあったのは怒りでも恨みでもない真っ直ぐな笑みだった。

貴「な、に…。やめてよ」

エレン「お前さ…昔から、あれがしたいとかこれが欲しいとか言わなかったろ。

変だけど、俺はユキのそういうのが聞いてみたかった」

貴「……」

エレン「それに」

エレンはユキの目線まで屈み、小さな子にするように話しかける。

エレン「約束する。誓うよ。

たとえ価値が無くなったって、俺はユキの傍にいてやる」

貴「…!」

エレン「それでも…どうしても自分の価値が知りたいなら嫌ってほど聞かせてやる。

お前の価値は“戦うこと”だけじゃない、絶対に!
弱くなっても、泣いても、たとえ戦えなくなっても、俺はしつこくお前の側に居続けてやる。

何度でも何度でも耳元で、わかるまで言ってやる!
『価値なんかどうでもいい』『ユキだから大切なんだ』って!」

ユキは目を見開いた。

今まで自分を自分たらしめていた事を、真っ向からほぼ全て否定されたのだ。

こんな経験は生まれて初めてだった。

胸の奥の奥に小さな明かりが灯ったのを感じたのも初めてだった。

エレン「…良いか、よく聞けよ?」

エレンはまたユキの顔を両手で持ち上げる。

貴「…!」

エレン「お前は『副兵士長』でも『“王”』でも無ぇ、『ユキ・アルレルト』って名前の1人の人間だ!
生意気で、泣き虫で、絵がド下手で…
賢くて、正直で、真っ直ぐで、優しい

この世界にたった1人の!」

ユキは、その時ようやく理解した。


───ユキがユキだから、僕らは君と一緒に居たいんだよ


あの時に兄が言った言葉の意味を。

自分はもう孤独では無いことも。

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水無月碧音(プロフ) - ピペットさん» ありがとうございます!続編へ移行しますが、これからもよろしくお願いします! (2020年4月10日 15時) (レス) id: 9308ec7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ピペット - 始めから読んでいますが感動の連続でした。この後の展開も楽しみです。これからも頑張ってください! (2020年4月10日 15時) (レス) id: 0435408fb3 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - ユキさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです(*^^*)完結までどうぞよろしくお願いします (2020年3月18日 10時) (レス) id: 9308ec7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - この小説は数多くある小説の中でもダントツに好きな小説です!!こんなに長く続けて頂きほんとにありがとうございます!!また5期?の進撃の巨人もよろしくお願いします! (2020年3月18日 9時) (レス) id: 40bc579dd3 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - 羅天心@らてんしんさん» やっと載せられて良かったです笑ありがとうございます笑笑 (2020年3月17日 17時) (レス) id: 9308ec7c9c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水無月碧音 | 作成日時:2019年7月16日 21時

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