俺 の モ ノ 。【不死川実弥】

俺の 。23 ページ24

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『A』



澄んだ翡翠色の瞳 、癖のない黒髪 。
愛おしむ様に頭を撫でる白い手は紛れもなく死んだはずの兄のモノだ 。



「ッ...」



お兄ちゃん 、お兄ちゃん 。

わたし 、最低な妹だよね 。
折角守ってくれたのにお兄ちゃんの事忘れようとした 。貰った髪飾りも捨てちゃった 。
ほんとに 、ほんとにごめんなさい 。


伝えたい事は山程あるのに声が出ない 。兄の夢を見る時はいつもそうだ 。
兄はそんな私を見てふわりと笑うと 、端正な唇を動かした 。



『もっと自分の事を 、大切にしなさい』

「 、」

『無理するなとは言わない...でもな 、』



＿＿自分を大切に想ってくれる人もいるんだって事 、忘れちゃ駄目だ 。




＊＊＊




次の瞬間 、兄の姿は何処にもなかった 。
時々見るお兄ちゃんの夢 。



...起きないと 。

横に流れた涙をごしごしと拭い 、身を捩れば背中に感じる温もり 。そのまま自分の身体に目を落とす 。

胸元が大きくはだけた寝巻き 。見せ付ける様に所々紅くなっている 。腰に巻き付く逞しい腕には無数の傷痕 。



あぁ...不死川さんに抱き着かれていたのか 。
すぅすぅと上下する胸筋が背中に触れる度 、きゅう 、と胸の奥が締め付けられる 。




＿＿俺は何処にも行かねェ 。

＿＿ずっとお前の側にいる 。




「(想われてる 、とか)」



そんな訳ないと言い聞かせつつも 、昨夜の甘い口付けを思い出して身体が熱を帯びていく 。
結局不死川さんが目を覚ますまで布団から出る事は出来なかった 。



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