妖精の尻尾 ページ23
その夜。
まだ笑いが絶えないギルド内で、ルシアは数時間前に出ていったナツ達の事を考えていた。
あの後すぐに、一人の少年がマカロフに声をかけたのだ。
名はロメオ。ギルドの仲間の一人であるマカオの息子で、皆からも可愛がられている。
そのマカオが、もう一週間も帰ってきてないらしい。
それを聞いたナツが、マカオを助けにハコベ山に行ったのだ。
親と離れ離れになる事の辛さを分かっているルシアは、マカオの事が気になって仕方がなかった。
んー、と悩みながらミラが作ってくれたホットケーキを口に入れた。
それとほぼ同時に、頭に違和感を覚える。
その違和感はグレイに頭を撫でられたからだった。
「ルーシア。何考えてんだよ。」
そう言いながら、グレイはルシアの隣の席に座る。
「分かってる癖に…」と呟けば、「マカオか?」と返ってきた。
「ん。…親と離れ離れの辛さは知ってるから、どうしても気になんだよ。」
目を伏せて思うのは、育ての親であるアクアリールの事。
拾われてから何年か経ったある日、いきなり目の前から消えたのだ。
何処を探しても見つからなく、一日中泣いた日もあった。
少なくとも今親が居るロメオにはそういう思いをしてほしくない。
それが、今のルシアの思い。
「ま、その気持ちは分からんでもないが…、あのクソ炎がいれば大丈夫だろ、」
癪だけど。と付け加えるグレイは、どこまでもナツが嫌いらしい。
グレイの何気ない優しさに心が温かくなったような感覚に、ルシアは自然と笑みを浮かべた。
それから更に数時間が経過した。
そろそろギルド内も静かになり始めた頃、突然門前が騒がしくなる。
「ルシアー!」と名前を呼ばれる。
振り返れば、傷だらけのマカオを背負ったナツが血相を変えて近寄ってきた。
「ナツ!?マカオも!どうした!?」
がたん、と音を立てながら立ち上がるルシアの横でグレイが眉を顰める。
「説明は後だ!マカオの傷治してやってくれ!」
「あぁ!?クソ炎!それがどういう意味か分かってんのか!?」
マカオを横に寝かしたナツが切羽詰まって言うと、グレイが立ち上がり反論する。
しかし、それすらもナツに「分かってんよ、そんな事!」と一蹴された。
「ルシア、」
「────…大丈夫、だから」
多分、と付け加えて、ルシアはマカオの前に跪く。
「水竜の抱擁」
そうルシアが呟けば、マカオの回りが光に包まれた。
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作者名:ねむ | 作成日時:2018年10月22日 0時