ここはロマンス大通り【ars】 (ページ26)

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■９月６日(晴れ一時雨) ページ26

窓の外から、水が地面を打ち付ける音が聴こえた。

「...あれ？」

カーテンを開けて外を見る。
暗くて一瞬分からなかったけど、どうやら雨が降ってるみたい。
コンクリートが濡れる匂いもしてる。

「雨.....あっ！洗濯物！」

さっき、仕事から帰って来た時には晴れてたのに！
急いで干しっ放しにしてた洗濯物を取り入れる。

「ギリギリセーフ！」

両手に洗濯物を抱えてベランダから部屋に入ると、チャイムが鳴った。

ピンポーン...と、一回。

エントランスのチャイムじゃない。
玄関のチャイム。

って事は、誰がやって来たのかなんて簡単に分かる。

ピンポーン。

ピンポンピンポンピンポーン。

連打。

「あーもー、すぐ出るからちょっと待ってよー！」

とりあえずソファの端っこに洗濯物を置いて、玄関に走る。
その間も、チャイムはもちろん鳴り続けてる。

「もう、ちょっと位待てないの！？」

若干怒ってる風を装ってドアを開けると

頭の先からズブ濡れになってる、二宮くん。

これじゃあ、本当に捨てられた子犬！
何か、表情まで眉毛下がっちゃって子犬感すごい！

「フフッ」
「笑うんじゃねぇよ」
「だって、捨てられたみたいだから」
「オレを拾う女の子は居ても、捨てる奴はいねぇよ」
「どっから出てくるのかな、その自信」

ペッタリしてる髪の先から、雨水が滴り落ちてる。
足元なんて、水たまり。

「ってゆーか、二宮くんビチャビチャなんだけど」
「だって、突然雨降って来たんだもん」
「だもん...」

萌え殺す気か。

二宮くんが頭をブルブルって振って、飛沫を飛ばした。

「雨宿りしたら良かったんじゃない？」
「出来る場所が無かった」
「えー...あ！潤さんのトコとか！」
「交番に雨宿りさせてくれって？迷惑でしょ」
「そうかなぁ...あっ、じゃあ桜とか三十四とか！」
「クロ連れて入れないよ、飲食店には」
「あ、そっか」

彼が言う通り、その腕の中には同じように濡れてるクロが抱かれてる。
どうやら散歩帰りらしい。

「クロー、大丈夫？風邪ひいちゃうね、早く乾かさなきゃね」

小さな頭を撫でて顔を寄せると、私の鼻をクンクンと嗅いで『知ってる人』って感じの顔をした。
気がする。

「何でよ」
「え？」
「何でオレには、風邪ひいちゃうねぇとか言ってくんないの！」

むぅっと顰め面した二宮くんが、「上がるよ」って私の横をすり抜けて玄関に入って来た。

二宮くんと付き合うようになってから、彼はよく私の部屋に来る。