陰キャラに恋は向いていない【稲荷崎】

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同じクラスの庵野さん。


ずっと吃っとる個性ない庵野さん。


量産型のエネミーの陰鬱な庵野さん。



どんだけ個性ない奴やろって興味本位で見てみたら気付くことなんかアホみたいにあった。


ええ匂いすること、授業中眼鏡しとること、肌すべすべで。


吃っとるのは相手を傷付けない為にちゃんと言葉選んどること。



ツムが好きなこと。




俺の片割れに告白したこと。



ちゃんと見とった。


でも仮やったから俺が狙ってもええやろって。


そう思っとった。



朝練の前。


教室の近く。



「イキんないでよね」


うめき声と小さな悲鳴。


手から血を流す庵野さん。



俺にしとけばええのに。


顔でどうせ選ぶんなら俺にしとけばええのに。



痛い思いして泣くんやったら俺にして。


俺やったら全部気付いたる、慰めたる。




俺やったら。





「辛かったなぁ」




庵野さんを仮になんてせんのに。


ちゃんと好きになって愛したるのに。

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