16.彼なりの気遣い。 ページ17
***
『…あの、ごめんなさい。』
周りが騒がしいので、聞こえるように大きな声でそう言った。
恐る恐る隣を見ると、2つのアイスブルーと視線が交わる。
彼ははじめは何のことか分かっていなかったみたいでまばたきを繰り返していたけど、やがて理解したようで私を茶化すときの顔になった。
「……何急に素直になっちゃってんの？なんかキモいよぉ。」
座席にふんぞり返りながらそう笑う彼に、今回は反発をしなかった。
彼はそんな私を不思議に思ったのか眉を上げた。
『昨日普通科に来たんですよね？』
「…行ったよ。この前はあんたの名前も連絡先も聞かないままうっかり帰っちゃったからさぁ。」
そう言いながら、瀬名泉は体勢を直して座席に背筋を伸ばして座った。モデルだから背骨が曲がることでも気にしたのだろうか。
「この前本屋さんで会ったときあんた普通科の制服だったから、もしかしたらいるかもって思ったんだけど。」
『ごめんなさい、その時早退しちゃってて。たくさん待ってたんですよね？時間とっちゃって本当にすみません。それに普通科の子にも囲まれてたって友人が……。』
一度話したら止まらなくなって、早口になってしまった。
そんな言葉を遮るようにして、彼は私の口元に手を当てた。
「別にあんたが謝ることじゃないでしょ？何も言わないで帰っちゃった俺が悪いんだから。」
『でも…。』
「ほら、もう始まるから静かにして。」
そう言って自身の唇に人差し指を添える瀬名泉は、悔しいけど絵になっている。
ちょうどそのタイミングで会場がブザーが鳴り、暗転して視界が悪くなった。
『……ありがとうございます。』
暗いのを良いことに、静かにそう言った。
顔が熱いのはきっとばれていないはず。
「別に。……連れてくって約束したから。」
私の頭に片手をのせてきた。
彼の顔は、暗くてよく見えなかった。
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とお(プロフ) - わあぁあぁ好きです…！更新待ってます！ (2022年2月16日 21時) (
レス) id: 89d53c4d30 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 悠希さん» なんと嬉しいお言葉を…！ありがとうございます(;_;) (2021年11月26日 12時) (レス) id: e457bdd78b (このIDを非表示/違反報告)
悠希(プロフ) - やばい瀬名泉がちゃんと瀬名泉してる…！(語彙力) (2021年11月20日 17時) (レス) @page39 id: afd5f610df (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - わー！有難いお言葉をありがとうございます…！めちゃくちゃ嬉しいです頑張ります;; (2021年10月26日 23時) (レス) id: e457bdd78b (このIDを非表示/違反報告)
じゃがいも - うわわわ………!!! 瀬名泉ならこういうこと本当にやりそうで面白いし、恋心に気付く瀬名泉さんの描き方がすごく好きです！応援してます！ (2021年9月6日 6時) (レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：作者 | 作成日時：2020年3月4日 22時
