恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ41)

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第40話１人の休日ページ41

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夏の午後の蒸し暑い沈黙がのしかかる外をAは歩いていた。
今日は休日で、久しぶりに一人でゆっくりと過ごすことができる。

いつもならばメフィストやらアマイモンやらが寮部屋に突撃してくるが、
今日はどちらも予定があるらしくAは一人だった。

全てを溶かしそうな熟れた熱気。
梅雨が終わり、いよいよ本格的な夏を迎えた事をAに伝えていた。

『そういえば一人で過ごす休日とか久々だなあ』

携帯電話を片手にAは呟いた。

なんだかんだ彼女は正十字学園に入学して以来、休日を一人で過ごす事が無かった。
兄であるスタンダールとは月に一度会えれば良い位だったが、
メフィストやアマイモンとの用事がいつの間にかできていたのだ。

あぶら蝉があつさをかきたてるように鳴いている日に
外出を好まないAが出歩いているのには理由があった。

「こちらで宜しいでしょうか？」

『はい、ありがとうございます。ベリアルさん』

そう。ベリアル―――ではなく、ベリアルが持ってきた本が欲しかったのだ。
とある人気推理小説の訳されていない原本。
小学校にあがる前から読みたくて仕方がなかった幻の書物。

絶版となっており古本屋などを探し回っても一冊も見つけられなかった推理小説。
それをメフィストが持っているというので貸してもらう事にしたのだ。

「いえ、お礼なら是非旦那様に。A様から直接言って下されば旦那様もお喜びになるでしょうから」

軽く頭を下げるベリアル。

はじめは"様"付けなんて落ち着かなくて気になっていたが、
こうも顔を合わせる回数が増えてくると慣れるものだな、とAは思った。

『どうしよう…もう読みたくて我慢できない』

ベリアルに別れの挨拶をし、寮部屋に戻る道を歩くA。
にこにこと花が咲いたように微笑んでいるその姿はすれ違う物の目をとらえて離さない。

部屋に戻る廊下へ続く階段を上がっていく刹那。

くらりと揺れて貧血かと案じたAだったが、窓側に置いてある鉢植えや、
飾ってある絵画の額縁も揺れていてようやく地震だと気づいたのだ。

『ッ、地震…!?なんで――』

ズズズ…と大地が波のように揺れ始めた。

この寮は頑丈に作られているはずなのに、私はプリンの上にでも立っているのか？
床がやわらかくなり、ゆっくり溶けて崩れていくような不思議な感覚に苛まれた。