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「知り合い?」
お姉ちゃんらしからぬ、あからさまに櫻井さんを警戒した態度。
この顔。もしかして、お姉ちゃん、勘違いしているかも……
私のデート相手と思って……?
私がフラれた相手と思って……?
「………高橋さんのお姉さん?」
先に空気を察したのは櫻井さん。
足を揃えて、背筋を伸ばしてから、頭を下げた。
「お世話になっています。
櫻井と申します。
同居している従兄弟が、高橋さんと同じクラスで。
縁あって、俺も仲良くさせていただいています」
櫻井さんの礼儀正しくも、見事な自己紹介で、お姉ちゃんの注意は「同居している従兄弟」にシフトしたらしい。
たぶん、営業スマイル、と言われる類の笑みを浮かべて挨拶するお姉ちゃん。
櫻井さんは、そんなお姉ちゃんに若干、苦笑した感はあるけれど、爽やかな笑顔で頭を下げた。
「すみません」
申し訳なくなって、口パクで謝ると、櫻井さんが笑って目配せをしてくれた。
「………受験?」
櫻井さんが、私とお姉ちゃんの手に抱えられた問題集を見つけて言う。
「はい。………今更、って感はあるんですが」
「そう」
櫻井さんが、嬉しそうに眼を細めてくれる。
「櫻井さんは………?」
櫻井さんの手には、高校生用の参考書。
私の視線に気づいた櫻井さんは、抱えていた参考書を持ち上げて私に見せた。
「あぁ、コレ?冬にね、塾の講師を頼まれてんの」
「講………師」
頭良さそう、とは思っていたけれど、高校生相手に塾講師ができるほどとは思っていなかった。
「講師、っていうか、高校生のは、まぁ、チューター、みたいなとこかな。
実際に受け持つのは中学生」
「チューター………」
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作者名:えりんこ
作成日時:2014年8月26日 0時