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31.4 ページ20

「お姉ちゃんは強引過ぎ。傲慢過ぎ。
お姉ちゃんには、私の気持ちは………」


言いかけて、やめる。
お姉ちゃんが、すごく優しい顔で私を見ていたから………


「私が、誰に対しても、いつでも、こんなに傍若無人に振る舞っていると思う?」


「………」


「確かに、あんたより気は強いし、意志は強固だし、無鉄砲なとこはあるけど……
私だって、へこんだりはするの。
だから、こうやって武装したりもする」


お姉ちゃんが指差したのは、9cmのピンヒール。


「それに、私がここまで強引に引っ張るのは、Aだけ。
Aはどんな私も、受け入れてくれるから。
………だから、Aが落ち込んでいるなら、私は手を貸したい。
それだけの話」


トントン、
最後のステップを軽く跳び越して、お姉ちゃんが振り向いた。
少しはにかむように笑うお姉ちゃんを見て、
私は、笑った。



「………本、赤本でもいい?」


「赤本、て、あんた」


「大学、外部受験、しようと思ってるの」


ずらりと棚3面に並んだ赤い背表紙の問題集。
目当ての教育学部がある大学の名前が書かれたそれを手にとる。


「国立………って、センターは?」


「出願してある」


「え?」


「サイトウ先生が、後生のために受けとけって」


「………あんたの担任、すごいわ」


お姉ちゃんが「あはは」と笑って私の肩を叩いた。
友だちの中で、私だけ、再提出を促された進路希望調査書。説得に根負けして、とりあえず出したセンター願書。
確かに、サイトウ先生には先見の明がある………私に関して。


「今日は、サービス。これとこれも買ってあげる」


お姉ちゃんが手にとって見せてくれたのは、青色の数学チャート式問題集と、英語の整序問題集。


「Aが、合格できますように」


ニッコリと笑うお姉ちゃんに、笑い返した時、
後ろの棚を見ていた人が棚を見渡そうとして後退ったのか、私の肩とぶつかる。


「あっ、すみません………」
「いえっ、私こそ…………」


「………高橋さん?」
「………櫻井さん?」


左腕に高校生用の参考書を抱えた櫻井さんが、いた。


「びっくりしたっ!偶然だね。
………あれ?髪、切ったの?
可愛いね。よく似合ってるよ」


頬を上げて、くりくりの眼を輝かせながら櫻井さんが笑う。
なんて返したらいいかわからなくて、切りたての髪先を指で摘まんで、ぺこりと頷いた。

ずい、っとお姉ちゃんが私の横に並ぶ。

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作者名:えりんこ
作成日時:2014年8月26日 0時

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