35.流行りに乗り遅れた流行 ページ35
『Aさんは、その爪はご自分で？』
『ああ、これですか？ええ、まあ』
自分の指先の朱を見る。
お気入りの色。欠かさず手入れを行っている指先。
『お似合いですね』
『……ありがとうございます』
街ゆく女性の爪は、キラキラ輝いている。
私の爪はそんな工夫なんてのは施してなくて、ただ、その色が持つ魅力のみで指先を彩っている。
単色、それでいて美しい。
『これ、気に入ってるんです。』
────そんな会話もしたことを、思い出した。
◇◇◇
覚悟していたような草間さんからの猛アピールもなく、以前のような日常が戻ってきつつあった。
そんな中、私にはひっそりとしたマイブームが出来ていた。
15時48分、その部屋の前で、「失礼します」と声を掛け、襖を開ける。
そこにいたのは、最近自腹をはたいて買ったのだという、大して大きくもない、一人用と言われても差し支えない程度のサイズのテレビの前で待機する、近藤さんの姿。
「おーAちゃん！ついに今日は最終回だな！」
「ですね」
────紛れもなく、此処は近藤さんの部屋だった。
静かに襖を閉めて、近藤さんの隣に腰掛けてテレビの前で待つ。化粧品のCMが流れる中、時計を確認してみれば49分。
こうして誰かと一緒にテレビの前でうずうずしながら待つのは、久しぶりだった。
そうして、時計の針が50分を指す。
CMが開けると、すっと前回までのあらすじが流れ始めた。
「なかなか面白かったが、今日で終わりなんだなあ。少し寂しいような気もしねェか？」
「そうですねー…、数日間だけでしたけど、日課になってましたからね」
────連続ドラマの再放送を、近藤さんの部屋で、近藤さんと一緒に見るのが、最近のマイブームだった。
きっかけは些細なことで、私が近藤さんに用事があって、部屋を訪れた。
その際に近藤さんは自腹で買ったというテレビの前に腰を据えていて、ドラマを見ていた。
話は途中だったけれど、Aちゃんも一緒にどうだ？と言われてしまえば、隣に並ぶより他に選択肢がない。
いざ見てみれば、ストーリーがなかなか凝っている。
平日の15時50分から始まる、5年ほど前に放送されていたドラマに、私たちはすっかり虜になってしまったのだった。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ！総悟！違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (
レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でｷｭｯとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓ｷｭｯってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました･･･笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます！ (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：木ノ嶋 | 作成日時：2018年8月17日 23時
