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34.端正な横顔 ページ34

「私かつ丼食べます」

「んじゃ俺も」



2人、横並びに定食屋に腰掛ける。

壁に貼られている、紙にサインペンで書いた程度の安っぽいメニュー一覧を眺めて、亭主に注文した。

目の前でカツが切られていく様を、何の目的もなくぼんやりと見つめてしまう。



「……で?何企んでるんでィ?」

「そんなこと、まだ気にしてたんですか」



隣に座る沖田さんは、顔だけをこちらに向けてじっと見つめてくる。

向かい合わせと、横並びとでは、見える景色は全然違うんだな、なんて呑気に思う。



「企みなんて、本当に何も無いですよ。ただ沖田さんとお昼を食べたかっただけです」

「仮にそうだとしても、草間が無関係だとは俺にゃ思えねェんだが」

「……でしょうね」



何せタイミングがタイミングだもんなあ。

草間さんに豪勢な夕食に連れられて、数日と経たないうちにこうして沖田さんを誘ってまで昼食を共にしている。

あの日、草間さんから頂いた服はクローゼットの中に丁寧に仕舞われている。



「美味しかったんですよねえ、豪華なお食事」



わかりやすく、沖田さんの目付きが鋭くなる。

こう言うと、沖田さんは怒る。

こう言うと、沖田さんは喜ぶ。

……こう言うと、沖田さんは照れる。

長年一緒にいるせいで、そんなこともわかってきた。わかってきてしまった。

それが1番、私にとって心地いい。



「でも、」

「はい、カツ丼ふたつね、お待たせ」



ことん、と私たちの前にカツ丼が置かれる。

沖田さんは私の続きの言葉を待っているかのように視線を逸らさなかったが、私は気づかないふりをしてカツ丼を食べる。



「冷めちゃいますよ」

「…、今、何言おうとしてた?」

「まあまあ」



はふ、とカツを頬張る。美味しい。此処のカツ丼は絶品。

そんな私を尻目に、沖田さんも食べ始めた。


────店もそんなに上品じゃない、むしろ庶民寄りの風貌だし。

食べてるものはカツ丼だし。

向かい合わせじゃなくて、横並びだし。



「……それでも」



隣に見える沖田さんが、頬いっぱいに詰め込むから。

なんでィ、とでも言いたげにこちらをじとりと見るから。



(……私にとっては、こっちの方が美味しいかな、って)



それが今の私の、素直な感想。

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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時

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