72.人生における転機 ページ22
それは突然のことだった。
近藤さん達が、武州から出て江戸に向かうというのだ。
そんな話、私には一切してくれなかった。それがショックで、理由も知りたくて、だから一目散にあの場所へと走った。
駆けつけた私を見て、近藤さんは驚いたようだった。
『……江戸に、行くんですか』
そこには総くんの姿もあって。
年齢で省かれたわけじゃないんだと、そう気付いてぐっと拳を握りしめる。
確かに、私よりも総くんの方がよっぽど強いけれど。
ずっと一緒にいて、もうひとつの家族のように思っていたのに、一言もないなんて。
連れて行ってくれだなんて言わないから、せめて何か言って欲しかった。
『……、Aちゃん』
近藤さんの困ったような顔。
困らせたい訳じゃなくって、でも、私の考えてることは、結局近藤さんを困らせることで。
……やっぱり嘘、連れて行ってくれだなんて言わないなんて、無理だ。
『……私も、一緒に行っちゃ、だめですか』
仲間はずれにしないで欲しいと、そう訴えてしまった。
困らせたくない、迷惑だと思われたくない。
それと同時に、この先もずっと、この人たちといたいという気持ちが強かった。
『……遊びに行くんじゃねェんだぞ』
低い、土方さんの声が真っ直ぐ届く。
言われなくても、あなた達の眼差しを見ていたら、わかる。
遊びなんかでは決してなくて、もっと、大きなものを背負っているのだと。
『……私がもっと強かったら、連れて行ってくれたんですか』
ワガママを言うなと、理性が私を叱咤している。
けれど本能が、私も一緒に江戸に出たいと叫んでいる。
『私も、江戸に行きたいです』
自分が思っていたより遥かに自分の意思が固くて、思っていたより遥かに芯のある声が出て。
困惑で揺れる近藤さんの瞳をじっと見つめる。
『いいじゃねェですかィ、近藤さん』
沈黙を破ったのは、総くんの気の抜けた声だった。
『確かにまだAは弱っちィが、筋はいいですぜ。そりゃわかってるんでしょう』
『しかしな、総悟……』
『心配ですかィ?なら俺が、此奴の面倒見まさァ。此奴のこともっと強くしやすし、本当に足でまといになったら切り捨てやす。それまでは俺が守る。それじゃあいけやせんかィ』
総くん、と呼ぼうとして声にならなかった。
ちらりとこちらを見た総くんの目は迷いがなく、子供だからと説き伏せるにはあまりに敵わない眼光だった。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時