ご主人様の言う通り (ページ43)

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櫻井「…じゃあ」

翔くんの電話が終わったのと同時に、この後のことが頭に浮かんだ。
当たって欲しくない予想。

櫻井「モモ……ごめん。ちょっと用事できた」

ほら。当たっちゃった。
当たって欲しくない私の予想。
言われなくたって分かる。
きっと“夏恋”っていう女の人に会うんだ。
今は『彼女』いないって言ってても、翔くんみたいな人、『元カノ』って類の人は数え切れないぐらいいるに違いない。

「…うん。分かった」

見ると、翔くんのお蕎麦はもう既に全部無くなっていて、
「…ごめんね」と、お会計だけ残して行ってしまった。

私のお蕎麦はまだ半分も減っていなかった。

「翔くん早すぎだよ…(笑)」

静かに一人で笑ってみるけれど、返って寂しくなるばかり。

まず大体、その“夏恋”って人が元カノなのかは定かじゃない。

そう自分に言い聞かせてみる。

「…ダメだ」

いつもの2倍の速さでお蕎麦を完食して、翔くんが置いていったお会計を払って、外に出る。

外に出てみると、お昼ってこともあってさっきよりも人通りが増えてる。
今はそれが落ち着く。

帰りながらも、私は下を向いたまま。
前を向けない理由はない。
ただ気分がそうさせるだけ。

…だけど、やっぱり今の時間帯に前を向かないのは危なくて、仕方なく前を見る。

「…え」

運悪く、いや、悪いなんてもんじゃない。

「…翔くん」
私の目の先には、翔くんの姿。

いつもは胸が高鳴ることなのに、今日は違う。

隣に女の人がたってるから？

2人で仲良さそうに話してるから？

どっちもだろう